[I-P-151] 心房中隔欠損症閉鎖術直後における両心室容量負荷の変化の検討
キーワード:心房中隔欠損症, 左室容量負荷, 左室拡張末期径
【背景】心房中隔欠損症(ASD)術後の左心不全は、術後心嚢液貯留を来しやすい状況を招き、厳格な水分管理を要する。その原因として、低形成の左室が術後にはASDというrelief mechanism、またはescape valveを失うためとされる。【目的】ASD閉鎖直後の両心室容量負荷の変化を心エコーにて定量評価する。【対象】2011年1月から2014年11月まで当院で手術をした10ヵ月から30歳の17症例。【方法】心エコーで、ASD閉鎖前と直後(術後3~7日)の僧帽弁輪径と三尖弁輪径、左室拡張末期径(LVEDd)を計測し比較検討した。弁輪径は拡張末期で計測した。【結果】三尖弁輪径の%normalは術前 136.4から術直後111.9に有意に低下し (p<0.01)、僧帽弁輪径の%normalは術前101.5から術直後111.6 に有意に上昇した(p=0.004)。僧帽弁輪径/三尖弁輪径比は術前0.75から術直後1.02 に有意に上昇した(p<0.01)。術前の僧帽弁輪径の%normalは年齢と有意な負の相関を認めた(p=0.03)が、両弁輪径ともQp/Qsとの相関は認められなかった。LVEDdの%normalについては術前 82.2から術直後86.9に有意に上昇した(p=0.03)。症例数は少ないが、その後エコーでフォローできた症例では術後14日~30日までにLVEDdは正常値まで回復した。術前LVEDdの%normalはQp/Qs及び年齢と有意な負の相関を認めた(共にp=0.03)。【考察】ASD閉鎖術後7日以内の早期に、三尖弁輪径、僧帽弁輪径、LVEDdともに有意な改善を示した。しかし、LVEDdの%normalが術後7日ではまだ正常値までは戻らず90%未満であることは、術後早期には左室は相対的に容量負荷の状態であることを意味し、注意深い水分管理が必要な根拠となる。