[I-P-154] 小児心臓手術における高感度心筋トロポニンIならびに脳性ナトリウム利尿ペプチドの測定意義
キーワード:心筋トロポニン, ナトリウム利尿ペプチド, 小児心臓手術
【背景】高感度心筋トロポニンI(TnI)は心筋障害を示唆するマーカーとして、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心不全を示唆するマーカーとして小児心疾患の日常診療に使用されているが、その臨床的意義については十分な検討がなされているとは言い難い。【目的】小児心臓手術前後にTnI、BNPを継時的に測定し、その有用性について検討した。【対象・方法】2012年4月から2014年3月までの当施設での手術施行例を対象とした。人工心肺使用例:心房中隔欠損閉鎖術32例(ASD群)、心室中隔欠損閉鎖術43例(VSD群)、人工心肺非使用例:肺動脈絞扼術15例(PAB群)、BTあるいはcentral shunt術9例(shunt群)について、術前、術後1日、7日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月時に採血し、血漿TnI 、BNPを測定した。統計学的手法は主に分散分析法を用いた。【結果】TnIはASD群、VSD群では術後1日をピークに急激に上昇、下降した。前、7日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で有意差はなかった。PAB群、shunt群おいても同様のパターンを示した。術後1日のTnIはVSD群、ASD群の順で高く、PAB群、shunt群、PDA群に比較し約10倍の上昇が認められた。後者の3群間ではTnIに有意差はなかった。一方、BNPはASD群、VSD群では術後1日をピークに上昇、緩徐に下降し7日も有意に高値であった。1ヶ月の時点からほぼ平坦化した。PAB群は術前が最も高値で、術後1日、7日、1ヶ月と徐々に低下し平坦化するパターンを呈した。Shunt群は前、術後1日、7日と有意に上昇し、7日をピークに下降し1ヶ月以降に平坦化するパターンを呈した。【考察】人工心肺を使用しない手術においてもTnIの上昇が起こること、TnI、BNPは手術により異なった継時的変化を辿ることが示された。両者を組み合わせて評価することで手術侵襲や循環動態の変化をより的確に把握することが可能になると思われた。