[I-P-165] 心房中隔心内膜flapを用いた心房内血流転換術を行った部分肺静脈還流異常を伴う心房中隔欠損症の一例
キーワード:部分肺静脈還流異常, 心房中隔心内膜flap, 心房内血流転換術
【はじめに】部分肺静脈還流異常(PAPVC)を合併した静脈洞型心房中隔欠損(ASD)に対して,その還流部位に応じた術式が選択されるが,人工布あるいは自己心膜がパッチとして使用され,硬化・退縮による変形が懸念される。今回我々は、PAPVCを合併したASD症例に対し,心房中隔心内膜flapを用いた心房内血流転換術を行い良好な結果を得たので報告する。【診断】ASD(静脈洞型),PAPVC【症例】5歳,男児,身長103cm,体重15.5kg。1歳時に心雑音を指摘され、ASDの診断で経過観察されていた。3歳時に前医へ紹介され,右上肺静脈(RUPV)が右心房(RA)上部へ還流するPAPVCを伴う上静脈洞型ASDと診断され,手術目的に当院へ紹介となった。【手術】部分胸骨正中切開でアプローチした。上行大動脈送血,下大静脈脱血で人工心肺開始。右心耳より脱血管を挿入し上大静脈へすすめtape upした。心筋保護液を注入し上行大動脈をtape upすることで遮断し心停止を得た。右房を切開,ASDは静脈洞型,RUPVと中肺静脈は合流後にRAへ開口。心房中隔の心内膜を卵円窩右側縁に沿って切開し,中隔内の心筋より心内膜を剥離しながらASD前・後縁に向かって切開しflapを作成した。PV開口部から1-2mm距離をとり,7-0ポリプロピレン糸の連続でflapを縫合しPV reroutingを行った。人工心肺離脱後の経食道心エコーではRUPVやSVC狭窄を認めなかった。【術後経過】術後UCGではASD leak認めず、SVC狭窄やRUPV狭窄を認めなかった。【まとめ】PAPVCを伴った上静脈洞型ASDの患児に対し,心房中隔心内膜flapを用いた心房内血流転換術を行い良好な結果を得た。本法は自己組織のみで血流転換が可能で,人工布や自己心膜パッチと異なり今後の成長が期待できる優れた術式であると思われた。