[I-P-175] 広範な僧帽弁前尖逸脱に対する二弁口化手術(Edge-to-edge repair)を実施した3例の長期遠隔成績
キーワード:先天性僧帽弁閉鎖不全, 前尖逸脱, Edge-to-edge repair
【背景と目的】小児の僧帽弁弁膜症は弁構造自体の先天異常であり、バリエーションも多く外科的再建には工夫を要する。中でも前尖に広範な病変を有する場合、弁置換術を免れることは難しい。さらに患児の体格が小さい場合、再弁置換術が必須である。このような症例に対する二弁口化手術が、弁輪の発育を待つための橋渡し手術として有効であるとの報告はない。そこで当院で実施した二弁口化手術の長期遠隔成績を検討することを目的とした。【対象と方法】1986年から2008年の間に実施された僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する弁手術は25例であり、初回手術で弁形成を行ったのは23例(再手術でMVR 7例)、MVRを行ったのは2例であった。弁形成のうち、二弁口化手術を実施した3例について、術前の弁病変の存在部位、術後の僧帽弁逆流量、MSの有無、左室拡張/収縮末期径(LVDd/s)、僧帽弁輪径(MVD)の評価を行った。【結果】3症例とも前尖逸脱を有した複合的なMRであった。手術時年齢は1歳2ヶ月、10ヶ月、9歳10ヶ月(平均47.3ヶ月)、手術時体重は9.7kg、5.8kg、31.2kg(平均15.6kg)であった。術後観察期間は140ヶ月、138ヶ月、97ヶ月(平均125ヶ月)で、いずれも外来通院中であった。MRの責任病変/合併疾患は(1)前尖逸脱と乳頭筋の偏位/VSD、(2)前尖逸脱と腱索肥厚/VSD、(3)前尖A2領域の無腱索による逸脱とP2腱索短縮/なし、であった。術前MRの程度は(1、2)moderate、(3)severeで、術後はいずれもmild以下であった。最終チェックでのLVDdは110 %N、105 %N、93%N、MVDはz 0.8、z -0.2、z 1.5であった。有意なMSを認めなかった。【考察】二弁口化手術後のMSの評価は難しいが有意な狭窄はなかった。平均10年を超える観察期間中に逆流の悪化はなく、弁輪の発育も良好であった。【結語】先天性僧帽弁閉鎖不全症に対するedge-to-edge repairは弁輪の発育を妨げず、かつ十分なdurationを持つ可能性がある。