[I-S01-06] Right Atrial Isomerismにおける周術期合併症の包括的検討
キーワード:無脾症候群, 合併症, 術後管理
【背景】Right atrial isomerism(無脾症候群)の治療成績は向上してきたが、腸回転異常や易感染性を有するため、実際の患者管理では諸合併症で難渋することが多い。しかしこれら合併症の全体像および経過に与える影響は不明である。【目的】無脾症候群周術期における諸合併症の問題を明らかにする。【方法】2011-14年に心臓手術後にICU入室した無脾症候群につき診療録・ICUチャートを後方視的に調査。ICU管理中の循環/呼吸/感染/消化管/神経の諸問題、滞在期間、予後について検討した。手術手技による合併症(神経麻痺や出血など)は除外した。【結果】4年間に無脾症候群36名に対し延べ70回手術介入を行った(同一入室中複数手術、E-CPRは除外)。体重6.9kg(2.5-34.4kg)、年齢1歳2ヶ月(1日-13歳5ヶ月)。主要手術内訳は PAB5例、BTS9例、PVO解除18例、BDG20例、TCPC15例(重複あり)。術後5例にECMO補助を行った。頻脈性不整脈を19例(27%)に認め、アミオダロン14例、ランジオロール2例、その他の薬剤を4例に使用、低体温を1例で併用した。感染症を7例(10%)、消化管穿孔を3例(4%)、脳出血/梗塞を2例(3%)で合併し、EDチューブ挿入を8例(11%)、CRRT/腹膜透析を4例(6%)で必要とした(重複あり)。全体では25例(36%)に何らかの合併症を認め、それらでは非併発群に比べICU滞在が長期化した(27日 vs 6日、p<0.001)。特にFontan到達前の手術では合併症を53例中23例(43%)に生じ、Fontan到達後の17例中2例(12%)に比較し有意に多かった(p<0.05)。周術期死亡は4名(6%)、全て合併症併発例であり死因は呼吸不全2、消化管穿孔1、循環不全1であった。【考察・結語】無脾症候群周術期、特にFontan到達前の介入では不整脈、消化管や感染などの諸問題を高率に合併しICU滞在が長期化した。死亡した4名中3名は心臓以外の原因で亡くなっていた。さらなる予後改善のためには循環器的な対応のみでなく集学的なアプローチが不可欠である。