[I-S02-01] 血流可視化技術(VFM)が切り開く新たな循環器画像診断
キーワード:Vector Flow Mapping, Energy loss, 血流解析
【背景】Vector Flow Mapping (VFM)エコーは、ドプラ法とスペックルトラッキング法の技術を応用した新技術で、血流可視化を可能にし、さらに血流効率を示すと考えられてきたEnergy loss(EL)の算出を可能にした。本研究ではVFMエコーを用いて先天性心疾患の心室内血流や大動脈血流の解析を行い、血流可視化およびEL算出という新たな観点から先天性心疾患の血行動態を解析した。【方法】心室中隔欠損症(VSD)の22乳児例、単心室患者6例、ファロー四徴症5例を対象とした。Prosound F75 (日立Alokaメディカル)を用いて、心室内血流と大動脈血流の血流解析を行った。【結果】VSDでは、手術前の拡張期のELが高値を示し、さらに拡張期のELは肺動脈圧と有意相関を示した(r=0.6569)。肺高血圧症例を除く16症例では、ELは肺体血流比と有意な相関を示した(r=0.6337)。心室内ELは血流効率と容量負荷に規定されることが示唆された。また、正常心では心室内で大きな渦流が形成されるが、左心系単心室(三尖弁閉鎖)患者では心室内に小さな複数の渦流が観察され、その周囲で高いELが観察された。さらに、正常心では心室内の大きな渦流は収縮期に慣性力として作用すると考えられているが、右心系単心室患者では渦流は拡張末期に消褪し、慣性力として渦流が機能していないことが示された。このように単心室循環は、心室内血流の観点からも非効率的であることが示唆された。さらにファロー四徴症の拡張した大動脈では、血流パターンが乱流となりさらに高いELが観察され、左心室への後負荷となっている可能性が示された。【結語】VFMエコーにより血流が視覚的に明示されるようになり、さらにEL計測はエネルギー効率や心負荷の新たな定量評価指標として期待できる。先天性心疾患の血行動態解析におけるVFMエコーの臨床応用のために、さらなる今後の症例の蓄積が望まれる。