第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム2
新しいシミュレーション医学の小児循環器医療への応用

2015年7月16日(木) 10:35 〜 12:05 第1会場 (1F ペガサス A)

座長:
白石 公 (国立循環器病研究センター)
板谷 慶一 (京都府立医科大学)

I-S02-01~I-S02-08

[I-S02-02] UT-Heartを用いた先天性心疾患手術例のマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレーション

假屋 太郎1, 鷲尾 巧2, 岡田 純一2, 中川 真智子3, 渡邉 正宏3, 門岡 良昌3, 佐野 俊二4, 永井 良三5, 杉浦 清了2, 久田 俊明2 (1.東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻 循環器内科学, 2.東京大学大学院 新領域創成科学研究科, 3.富士通株式会社, 4.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科, 5.自治医科大学)

キーワード:スーパーコンピューター, 先天性心疾患, 個別心臓シミュレーション

【背景】心臓シミュレータUT-Heartの開発は東京大学新領域創成科学研究科で計算科学(久田)と医学(杉浦)の学融合により2001年から始まった。UT-Heartは、分子・細胞から出発し、刺激伝導系・興奮収縮連関・冠循環等も実装し、血液流体と心筋や弁組織などの相互作用を含め、最先端の計算科学でスーパーコンピューターを用いて正面から計算した、マルチフィジックス(力学・電気生理・生化学)、マルチスケール(分子~循環系)の心臓シミュレータである。我々はUT-Heartによる患者の個別心臓シミュレーションを用いて、最適医療の個別予測に取り組んでいる。【目的と方法】UT-Heartを用い、先天性心疾患の手術例3例(両大血管右室起始症2例、修正大血管転位症1例)につき術前・術後状態を作成し、実際の術前・術後状態と比較し検討した。具体的には術前の血行動態を十分再現した上で、コンピューター内で術前モデルに対し手術し、術後状態を計算し、実際の術後と比較した。施行されなかった術式も検討した。【結果と考察】血流・血圧・肺体血流量・心筋や弁の運動・血液酸素飽和度・血液のミキシングを計算し可視化した。各部位の血液酸素飽和度や血圧は実測値とよい一致を示した。術式の比較では、術後の心係数や心室圧のみならず心臓のATP消費量など直接的なエネルギー指標も計算でき、術後状態の定量的・定性的な比較を実現した。複雑な先天性心疾患の術式決定に際しては、限られた報告に加え、通説や術者の経験に依存することが多い。個別心臓シミュレーションにより、治療方針検討のための指標を提供でき、患者の予後改善のみならず、経験の少ない医師への教育効果をもたらすことが期待される。【結論】UT-Heartを用いて先天性心疾患の個別心臓シミュレーションと術後の予測を行った。UT-Heartは治療方針決定や医師の専門教育に活用できると思われる。