第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム4
先天性心疾患の発生と幹細胞医学

Thu. Jul 16, 2015 9:00 AM - 10:30 AM 第3会場 (1F ペガサス C)

座長:
南沢 享 (東京慈恵会医科大学)
山岸 敬幸 (慶應義塾大学)

I-S04-01~I-S04-06

[I-S04-01] 心臓血管形態形成に関与するシグナル伝達系の分子機構

中川 修 (国立循環器病研究センター研究所 分子生理部)

Keywords:心血管形態形成, シグナル伝達, 内皮細胞

心血管系の発生・形態形成は胎児発育に必須の初期ステップであり、心血管奇形は出生児約100人に1人発症する最も多い先天奇形である。心血管発生は多様な細胞情報伝達系・遺伝子発現調節機構によって制御されており、多くの転写因子やシグナル伝達因子の変異や機能異常がヒト心血管奇形の原因となる。
私たちは以前より、Notch情報伝達系の下流転写調節因子であるHairy-related transcription factorファミリー(Hrt/Hey/Hesr/Herp/CHF)の心血管系における意義を検討してきた。Hrt1/Hey1とHrt2/Hey2は発生期の心血管形態形成において相補的かつ重要な機能を有することが報告されていたが、最近私たちは、conditional KOマウスを用いた検討により内皮細胞におけるHrtファミリーの機能が血管発生に必須であることを見いだした。一方、TGFβスーパーファミリーの一員であるBone morphogenetic protein 9(BMP9)/BMP10はALK1受容体コンプレックスの活性化により内皮細胞の分化と血管形態形成に働くことが知られ、Notch情報伝達系と協同してHrt/Heyなどの血管系シグナル伝達因子の発現レベルを調節することも報告されている。最近私たちは、ALK1受容体の活性化によって発現制御を受ける新しい血管内皮遺伝子Tmem100を同定し、Tmem100欠損マウスがALK1受容体欠損マウスと同様の重篤な血管形成異常により胎生致死となることを見いだした。また、Tmem100欠損マウスにおいて心臓房室管の内皮間葉細胞分化(EndMT)が著しく抑制され、心内膜内皮のNFATc1転写因子核移行障害が認められることより、内皮細胞におけるカルシウムイオンシグナリング異常の存在が示唆された。
今回これらの研究結果について報告し、心血管系の発生・分化と形態形成を制御するシグナル伝達機構について考察したい。