[I-S05-02] 心不全に対するβ遮断薬療法;量と種類(成人を含む)
Keywords:心不全, β遮断薬, 小児
【背景】慢性心不全に対するβ遮断薬は、成人では無症候の段階からの使用が推奨される標準治療だが、我が国では使用率が低い(underuse)、使用量が少ない(underdose)問題点の他、多くのclinical question(CQ)が残されている。一方、小児では、使用の有用性を示唆する質の高い科学的根拠は多くなく、その使用は手探りである。【CQ1、種類】どの種類のβ遮断薬を用いるべきか?現在、我が国で心不全に適応があるのはカルベジロール、ビソプロロールの二剤である。これらは脂溶性の薬剤であり、好ましいとされる。小児でもあてはまるか?【CQ2、投与対象】Underuseが問題点の一つだが、β遮断薬が使われていない患者の多くは、低血圧や徐脈性不整脈などを合併した、β遮断薬を使用しにくい対象であると考えられる。心予備の乏しい小児ではどのような対象に投与したら効果が期待できるか?【CQ3、投与量】日本人では欧米と同等の投与量を忍容し難いという民族差もある。血中濃度の個人差も大きい。多ければ多いほどよいのか、何をメルクマールに増量すればよいか?少し悪いときに、だから増やすのか、減らすのか、変えないのか?急性増悪したときに、やめる、やめない、減量する?【CQ4、開始・継続】急性心不全回復期のいつの時点からβ遮断薬を開始すべきか、併用療法はいかにすべきか?心不全が急性増悪した際にβ遮断薬を中止すると予後が悪いことが報告されているが、どう考えるか?小児でもあてはまるか?【方向性】本検討では、成人で積み重ねられた科学的根拠と、小児におけるbest available evidenceを吟味し、わかっていること、わからないことを見定め、臨床使用におけるさじ加減についても考察を加えたい。小児では殊に、これらのCQに答えるための科学的根拠は十分でなく、本討論が今後の質の高い科学的根拠の構築のたたき台となれば幸いである。