第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5
小児心不全の治療

2015年7月16日(木) 10:40 〜 12:10 第3会場 (1F ペガサス C)

座長:
石川 司朗 (福岡市立こども病院)
村上 智明 (千葉県こども病院)
コメンテーター:
Shelley Deanne Miyamoto(University of Colorado Denver Children's Hospital Colorado, USA)

I-S05-01~I-S05-05

[I-S05-03] 小児および先天性心疾患の心不全におけるβ遮断薬療法

脇 研自, 松本 祥美, 水戸守 真寿, 横田 恵里子, 鷲尾 真実, 上田 和利, 松尾 康司, 荻野 佳代, 林 知宏, 新垣 義夫 (倉敷中央病院 小児科)

キーワード:β遮断薬, 心不全, 小児

【背景】小児および先天性心疾患の心不全に対するβ遮断薬(βB)の有効性についての十分なデータはない。【目的】当院におけるβB療法の現状とその有効性について検討する。【対象】2000年5月~2015年2月までに抗心不全療法としてβB投与を行った心不全患者50例(男:女=27:23)。投与開始時年齢は0.2~57.2歳(中央値6.5歳)。基礎疾患により先天性心疾患(単心室17例、2心室12例)をA群(29例)、拡張型心筋症をB群(13例)、その他(川崎病後等)をC群(8例)に分けた。使用したβBはカルベジロール46例、ビソプロロール4例。 【方法】(1)心不全の指標として心拍数(HR)、心胸郭比(CTR)、心房利尿ペプチド(BNP)、体心室駆出率(EF)についてβ遮断薬投与開始前後で比較検討した。(2)基礎疾患(A,B,C群)、開始時年齢(2歳未満vs2歳以上)、開始時EF(30%未満vs 30%以上)について心事故(死亡または心移植)発生率をLog-rank検定を用いて比較検討。さらにA群では単心室(SV群)と2心室(BV群)について比較検討した。【結果】開始量(mg/kg/day)は0.001~0.146mg(中央値0.038)、最大量 0.002~0.598(中央値0.102)。(1)HR(bpm): 111±27.2, 95.3±22.7(p<0.0001), CTR(%); 63.4±7.9, 59.8±7.4(p<0.005), logBNP(pg/mL); 2.52±0.61, 2.11±0.86 (p<0.01), EF(%); 35.6±13.7, 43.6±19.8 (p<0.005)と改善がみられた。(2)心事故発生率は開始時EF<30%で有意(p<0.05)に高く、A群に比しB,C群で高い傾向に(p=0.136)、開始時年齢(p=0.456)、SV群・BV群(p=0.393)で有意差はなかった。【結論】小児および成人先天性心疾患の心不全治療においてβB療法により心不全指標の改善がみられた。しかし有効性は基礎心疾患により異なる可能性がある。また開始時EF30%未満はその有効性が低いと考えられた。極少量から投与することで比較的安全に使用できた。