要望演題5
肺高血圧

[I-YB05-02] 肺高血圧を伴う心室中隔欠損症における肺血管拡張/収縮因子均衡のDown症候群と非Down症候群での比較検討

^○大木 寛生¹, 山田 浩之¹, 宮田 功一¹, 福島 直哉¹, 横山 晶一郎¹, 三浦 大¹, 澁谷 和彦¹, 岩崎 美佳², 小谷 聡秀², 吉村 幸浩², 寺田 正次² (1.東京都立小児総合医療センター　循環器科,　2.東京都立小児総合医療センター　心臓血管外科)

Keywords:肺高血圧, Down症候群, 硝酸イオン

【背景】Down症候群(DS)は最も多い先天性心疾患(CHD)関連染色体異常症で，DSの約半数にCHDを合併し多くが肺高血圧(PH)を伴う左右短絡疾患で心室中隔欠損症(VSD)が最も多い．肺血管閉塞性病変の進行が早い，術後PH発作が多い，PHが遷延しやすいが機序は十分に解明されていない．
【目的】PHを伴うVSDにおける肺血管拡張/収縮因子をDSと非DSで比較．
【方法】PHを伴うVSDを主病変とするDS28例と非DS20例を対象とし術前術後の心臓カテーテル検査で採取した下大静脈血でエンドセリン1(E)，一酸化窒素安定代謝産物の硝酸イオン(N)，プロスタサイクリン安定代謝産物の6ケトプロスタグランジンF1α(P)を測定．
【結果】DS術前→術後/非DS術前→術後の順に中央値(幅)を示す．
肺血流量(Qp)(l/min/m²)：10.3(5.5-16.8)→3.9(3.0-6.1)/10.9(3.9-21.4)→4.1(3.1-5.5)，
平均主肺動脈圧(mPAP)(mmHg)：33(26-51)→17(14-24)/33(25-55)→16(12-30)，
肺血管抵抗(Rp)(Um²)：2.3(1.0-7.5)→2.6(1.5-4.6)/1.8(0.7-7.3)→2.2(1.5-5.5)，
肺動脈係数(PAI)：251(171-366)→194(123-329)/377(239-553)→265(182-333)，
E(pg/ml)：3.4(2.1-6.6)→2.4(1.7-3.4)/3.9(3.4-5.7)→2.8(2.1-3.2)，
N(μmol/l)：146(67-871)→86(42-203)/60(22-110)→26(18-56)，
P(pg/ml)：59(25-68)→41(26-66)/39(29-84)→30(16-75)．
術前術後比較(Wilcoxon検定)：術前から術後へQp，mPAP，PAIは低下(全てp＜0.001)．E，N，Pも低下（p＜0.001，p＜0.001，p=0.005）．
DS非DS比較(Mann-Whitney検定)：術後RpはDSで高値(p=0.023)．術前術後ともにPAIはDSで低値(p＜0.001，p＜0.001)， E，Pは有意差なし，NはDSで高値(p＜0.001，p＜0.001)．
【結語】E, N, P3者ともにPH・高Qpなど肺血管ストレスに連動して上昇した．DSは非DSより術前術後ともにPAI低値，N高値で，少ない肺血管床を肺血管拡張因子である一酸化窒素系を亢進させて代償しておりPHを呈しやすい素地を持つと考えられた．