第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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要望演題

1-16 肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

要望演題5
肺高血圧

Thu. Jul 16, 2015 2:50 PM - 3:40 PM 第5会場 (1F アポロン A)

座長:
山田 修 (国立循環器病研究センター)
福島 裕之 (慶応義塾大学病院)

I-YB5-01~I-YB5-05

[I-YB05-03] 多脾症候群において早期に進行する肺動脈性肺高血圧症

柴田 映道1, 森 浩輝2, 前田 潤1, 福島 裕之1, 中西 敏雄2, 山岸 敬幸1 (1.慶應義塾大学医学部 小児科学教室, 2.東京女子医科大学医学部 循環器小児科)

Keywords:多脾症候群, 肺高血圧, 心房間左右短絡

【背景】多脾症候群(poly)に伴う先天性心疾患に肺動脈性肺高血圧症(PAH)が合併し、治療に難渋することがある。しかしその臨床像は多様で、PAHの成因については不明な点が多い。【目的】polyでは、通常PAHを呈することが少ない心房間左右短絡(三尖弁より前の左右短絡:pre-tricuspid shunt;PTS)心疾患でも、PAHが早期に進行することを明らかにする。【方法】1983年から2014年に慶應義塾大学病院および東京女子医科大学病院で診療したpoly236例のうち、心疾患がPTSのみであった32症例を抽出し後方視的に検討した。非症候性のPTS心疾患22症例を対照群とし、術前PAH合併の有無、PAH発症年齢、カテーテル検査値、術後PAH残存の有無、転帰を比較した。【結果】心疾患内訳は、polyでは単心房4例、心房中隔欠損9例、不完全型房室中隔欠損(iAVSD)19例、対照群では全例iAVSDだった。polyにおける門脈体循環短絡(PoSS)の合併は32例中1例のみだった。polyでは対照群に比して術前PAHが有意に多く(19/32例(59%)vs2/22(9%);p<0.001)、PAH発症年齢が有意に低かった(中央値:2か月vs29か月;p<0.001)。術前カテーテル検査では、平均肺動脈圧34mmHgvs19mmHg(p<0.001)、肺血管抵抗4.8Wood単位vs1.4Wood単位(p<0.01)と、polyにおいてPAH早期進行を認めた。術後PAH残存もpolyで有意に多かった(12/15(80%)vs0/22(0%);p<0.001)。polyでは3/32例(8%)が死亡し、対照群は全例生存した。【考察】polyではPTSのみでも半数が生後2か月以内と早期にPAHを発症し、手術不能となる例もある。また術前PAHを認めた症例では8割で術後もPAHが残存する。PoSSはPAHのリスク因子として知られているが、本研究では明らかなPoSSを認めたのは1例のみであり、polyそのものの特性によりPTS心疾患でも早期にPAHが進行することが示唆された。【結語】多脾症候群におけるPTS心疾患では、非症候性に比して早期にPAHが進行することを念頭に、治療戦略を立てる必要がある。