[I-YB05-05] 光干渉断層像(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いた肺高血圧に伴う肺血管病変の観察
キーワード:光干渉断層像, 肺高血圧, vaso vasorum
【背景】小児期肺高血圧症の重症度や病状評価には、血液検査、血行動態、薬剤反応性試験などが主な指標として用いられる。一方、病理学的診断による重症度判定は困難であり診療上利用されることは少ない。光干渉断層像(OCT)は近赤外線を利用して組織を高解像度で描出することができ、optical biopsy(光学生検)と言われるリアルタイムの組織性状を観察できるカテーテルベースのデバイスである。【目的】OCTを用いた肺動脈病変の観察が肺循環動態評価に有用か否か検討する。【方法】小児心疾患症例35例(年齢 1~9歳, 平均肺動脈圧 11~38mmHg)を対象として、心臓カテーテル検査時に血管径2.0~4.0mmの肺動脈をOCTで観察した。測定で得られた肺動脈壁厚、肺動脈壁厚/血管径比、血管壁におけるOCTシグナルの減衰曲線などを計測して 肺循環動態と比較検討した。【結果】全症例において肺動脈壁は明瞭に観察された。内・中・外膜が区別されて観察される部位もあったが、内中膜が1層として認められることが多かった。観察された肺動脈壁厚は、0.11~0.29mmであった。肺動脈壁厚および肺動脈壁厚/血管径比は、肺動脈平均圧、肺血管抵抗とr=0.35, 0.37および0.32, 0.36 (すべてp<0.05)で正相関を認めた。さらに、Pulmonary artery capacitance indexとは、r=-0.29, -0.31(ともにp<0.05)の相関を認めた。OCTシグナルの減衰曲線から得られたIntensity half distanceは肺高血圧を有する症例で延長しており、血管外膜の肥厚、線維化が進行していることが示された。さらに外膜にはVasa vasorumの増生が認められた。これらは肺高血圧症における組織学的変化を反映しているものと考えられた。【結語】OCTによる肺動脈の所見は肺高血圧の血管リモデリングを示す病理学的所見を反映していると考えられた。さらに肺循環動態を反映しており臨床的有用性が示された。