[I-YB06-01] プロスタノイドの動脈管閉鎖における役割
Keywords:シクロオキシゲナーゼ, プロスタグランディン, トロンボキサン
未熟児動脈管開存症の薬物治療には、インドメタシンを中心とするシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤が用いられる。これはプロスタグランディン (PG) E2とその特異的受容体EP4シグナルの活性化が強い動脈管平滑筋弛緩作用を有することを標的としている。一方、動脈管の閉鎖には、平滑筋収縮による機能的閉鎖ばかりでなく、内膜肥厚や弾性線維の形成抑制など血管構造変化を伴う解剖学的閉鎖が重要であることが知られており、未熟児動脈管では、血管収縮反応の低下と血管構造変化の未熟性の双方が関与して、生後も開存し続けると考えられる。我々はPGE2-EP4シグナルの活性化は平滑筋弛緩作用以外に、生理的な血管内膜肥厚形成の促進作用、さらに弾性線維形成抑制効果を介する動脈管筋性血管化など血管リモデリングにも重要な働きをしていることを見出した。すなわち、COX阻害剤によるPGE2-EP4シグナルの抑制は、血管リモデリングを抑制し、動脈管閉鎖を抑制することが示唆される。従って、未熟児動脈管開存症の薬物治療として、理想的には平滑筋収縮を促すとともに、血管リモデリングを促進する薬剤が求められる。また、COXはPGE2ばかりでなく、生体膜構成成分アラキドン酸を基質として産生される生理活性脂質プロスタノイドの律速酵素として働くため、他のPGやトロンボキサン(TX)の産生も抑制する。しかし、PGE2以外のプロスタノイドが動脈管開存に果たす役割については十分に検討されていない。我々はプロスタノイドの一種であるTXA2には低濃度の使用で、選択的な動脈管収縮作用と血管リモデリング促進作用があることを動物実験で見出した。本発表では我々の動物実験における結果から、プロスタノイドを標的とする未熟児動脈管治療の課題と展望について論じたい。