[I-YB08-02] 小児劇症型心筋炎に対する Bridge to Decision deviceとしてのperipheral ECMO: 長期VAD・心移植まで見据えた地域連携
キーワード:fulminant myocarditis, ECMO, VAD
【背景】劇症型心筋炎は急激な血行動態の破綻を来し,タイミングを逸しない対応が必要である.一方小児の心移植が法制化された現在,長期補助循環治療の奏功を狙ったストラテジーが初期段階から求められる.【方法】劇症型心筋炎の初期補助循環として,peripheral V-A ECMOを用い,unloadingが不十分な場合はcentral ECMOに切り替えた.72時間以内に判断し,必要な症例は1週間以内にVAD治療へ移行できるようにしている.その際,現在臨床使用可能なVADの関係上,BSA1.1m2を境に当地域か他地域での治療かが分かれている.当院での治療経験を振り返り,適切な治療体系について考察する.【結果】2012~2014年にECMO治療を要した劇症型心筋炎7例が対象.年齢は3か月-13歳 (中央値8歳). BSAは0.35-1.35 m2 (中央値0.98m2). 全例ICUベッドサイドで施行した.1例はcentral ECMOへの切り替えを要し,2例が他地域でVAD治療のためにECMO開始3,5日目に転院し,内1例は植込み型VADに移行し移植待機下に退院.5例が6.5±2.9日でECMOからの離脱可能であったが,内2例はMOFが遷延し死亡した.死亡群は生存群と比較し来院からECMO導入までの時間が長い傾向を認めた(平均3±1時間 対 32±28時間).これは腹膜透析,CHDFや心室ペーシングさらには高容量の強心剤といった最大限の内科的治療によりECMO導入の回避を狙った結果であった.個々の症例を見ると,ECMO開始時に各臓器障害が明らかな例では以後も臓器の回復を認めにくい傾向を認めた.【結語】治療の方向を判断する上で,初期のperipheral ECMOは有用であった.臓器障害が明らかになる前に補助循環の導入を決断することが臓器保護の観点から重要である傾向を認めた.この疾患のスペクトラムに対応すべく,臓器機能を維持し,次に継る治療を,地域内のVAD認定施設と連携し,さらに小児心移植施設と協力し地域の枠を超えて提供してくことが重要である.