第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

要望演題

1-10 心筋心膜疾患

要望演題8
心筋炎

2015年7月16日(木) 09:00 〜 09:50 第8会場 (1F シリウス B)

座長:
磯松 幸尚 (横浜市立大学)
森 一博 (徳島県立中央病院)

I-YB8-01~I-YB8-05

[I-YB08-04] 小児心筋炎重症化の予測因子の検討 ~炎症・心筋壁浮腫との関連~

赤繁 徹, 渕上 泰, 西岡 雅彦, 長田 信洋, 中矢代 真美, 高橋 一浩, 鍋嶋 泰典, 差波 新 (沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)

キーワード:心筋炎, 壁浮腫, 重症化予測

【目的】心筋炎は重症例で体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要とされるが、適切な導入タイミングの判断は難しい。その判断の一助となる重症化の予測因子を検討した。【対象と方法】当院で2011年12月から2014年5月の間に、心筋炎と臨床診断された小児症例が13例(年齢中央値2.5 (0.0―14.8)歳、体重中央値13.0 (2.6-54.2)kg)あり、うち7例にECMOを導入。ECMO適応と判断したが導入しなかった1例は分析から除外。重症(E)群(ECMO導入)7例と非重症(N)群(非導入)5例に分類。小児循環器医師初診時の検査所見(採血、心電図、心エコーで炎症との関連を予想した項目)を後方視的に比較。また、Mモード心エコーの値から心室壁の厚さの割合を示す壁肥厚率(WTR)を{IVSd(中隔壁拡張末期径)+PWd(左室後壁拡張末期径)}/{IVSd+LVIDd(左室拡張末期径)+PWd}と定義し両群を比較。【結果】 E群7例のうち3例はECPR。7例中2例が死亡、5例は生存退院、うち1例は移植待機中。N群は全例生存退院。初診時検査所見の比較にて、CRP (C-reactive protein)、AST (aspartate aminotransferase)、LDH (lactate dehydrogenase)に有意差ないが、CK (creatine kinase) (中央値1083 vs 101 IU/L; p=0.042)、心電図QRS幅(中央値112 vs 64 millisecond; p=0.028)はE群で有意に高値。エコーではPWdのz値、駆出率、左室内径短縮率に有意差ないが、IVSdのz値(中央値+4.88 vs -0.71; p=0.028)、LVIDdのz値(中央値-0.09 vs +1.78; p=0.042)とWTR (中央値0.33 vs 0.25; p=0.012)に両群間で有意差あり。【考察】初診時のCK、IVSd・LVIDdのz値・WTR、心電図QRS幅が重症化予測に使用可能と思われた。これは、より高度な炎症が、心筋酵素の逸脱や壁浮腫、伝導障害の程度を強めるためではないか。WTRは簡便な壁浮腫の指標で、小児多数例の正常心エコー値の報告を用いた計算にて体表面積に対する変化が小さく、小児心筋炎の重症化予測に有用と思われた。