[II-O-03] 小児僧帽弁置換術後長期遠隔期の検討
キーワード:僧帽弁置換, 小児, 再弁置換
【背景】小児僧房弁置換(MVR)は、再手術率も高く、比較的予後不良である。全米の多施設研究(Circulation 2001)においても、10年生存率は74%にとどまっている。一方で長期遠隔期の情報が少ない。【目的】小児期にMVRを行った患者の術後長期遠隔期を後方視的に検討する。【方法】当院で1988年より大血管関係が正常で二心室修復可能な症例で、僧帽弁病変のためMVRを施行した20歳未満の患児49例を対象とした。遠隔期生存率、再手術回避率、塞栓症回避率を検討した。当院で追跡しえた26例で、心エコー検査からの左室拡張末期径(LVDd)、左室収縮末期径(LVDs)、左室内径短絡率(SF)、左室最大流入速度、三尖弁逆流から推定される右室圧 (RVp)、心電図から、心房粗細動の割合、ペースメーカー(PM)装着率、また、血中BNP値を検討した。【結果】MVRの原疾患の内訳は、先天性僧房弁異常21例、房室中隔欠損12例、左心系低形成に伴うもの5例、その他は10例であった。閉鎖不全が主原因は、33例、狭窄9例、狭窄かつ閉鎖不全が17例であった。先行開心術は23例(47%)。初回MVRは、平均手術時年齢5.9 ± 4.5年であった。平均追跡期間は10.8 ± 8.9年。早期死亡2例、遠隔死7例。10年生存率は、80.2%、20年生存率は76.5%で、再MVRは10例に、再々MVRは2例に行われた。20年再手術回避率は、67.3%。20年塞栓症回避率は86.2%であった。遠隔期LVDd 40.2 ± 5.9 mm (+0.1 SD)、LVDs 27.7 ± 3.8 mm (+0.6 SD)、LVSF 30.0 ± 7.4 %であり、LVSF 20%以下の症例を2例に認めた。左室最大流入速度2.3 ± 0.4 m/sであり、RVpは43 ±18 mmHgであった。3例(12%)が心房細動、2例(8%)にPMが埋めこまれていた。平均血中BNP値 70 ± 53 pg/mlであった。【結語】小児期MVRは、生存症例の心機能は比較的保たれていたが、再手術症例が多く、その遠隔期成績は、いまだ、満足のいくものではない。さらなる改善対策が必要と考えられた。