[II-O-04] 遠隔成績から見たEbstein奇形の手術適応と至適時期
Keywords:Ebstein奇形, 手術適応, 至適時期
【目的】以前、Ebstein奇形は加齢とともに大きな右室に左室が圧排され、左心機能が低下すること報告した。今回、根治術後の遠隔成績から本疾患の手術適応と至適時期を再検討した。【対象と方法】1982年から2013年までの間に根治術を施行した、症状初発年齢が20歳以下のEbstein奇形40例。男性15例、女性25例で手術時年齢は(3カ月から66歳)中央値13歳。三尖弁逆流の程度はStarnes術後2例、I度3例、III度7例、IV度28例。手術術式は三尖弁形成術29例、三尖弁置換術6例、三尖弁無処置2例、Fontan型手術3例。【結果】病院死亡2例(5%, 7歳(右室不全)、11歳(左室機能不全))。生存例では術前後でNYHA分類の改善(2.1±0.9→1.4±0.7, P<0.01)、TRの改善(3.6±0.9度→1.7±1.2度, P<0.01) 、CTRの減少(65.6±8.4%→60.2±7.8%, P<0.01)、SaO2の上昇(89.6±8.6%→96.4±1.8%, P<0.01)を認め,根治手術によりQOLは飛躍的に改善。手術時年齢は術前LVEDV (r = -0.47, P<0.01)、LVSV (r = -0.51, P<0.01)とそれぞれ負の相関を認めた。また術前Qp/Qsと術後Qsに有意な相関を認め(r = 0.52, P = 0.02)、Qp/Qs<0.7の3症例はASD部分閉鎖を必要とし病院死亡、遠隔死亡を1例ずつ認めた。遠隔死亡6例(15%)で遷延する右心不全2例、不整脈3例、非心臓死1例(肺炎)であった。Kaplan-Meier法による累積生存率は5年92.0%、10年80.4%、20年80.4%、30年71.5%であった。弁形成後の弁置換へconversion1例、BDG追加2例、遠隔期のFontan conversion2例を認めた。心事故回避率は5年84.8%、10年70.3%、20年67.3%、30年59.8%。また手術時年齢と遠隔期NYHA (r = 0.46, P = 0.03)、BNP (r = 0.55, P<0.01)との間に正の相関を認めた。【結語】加齢に応じた左室機能の低下やQp/Qsの減少は、術後急性期のLOS(Qs低下)のみならず遠隔期のQOL(NYHA, BNP)にも影響するため、moderate以上の三尖弁逆流があれば学童期以前の早期の心内修復術が望ましい。