[II-O-06] Norwood術後の上行大動脈についての検討
キーワード:Norwood, 上行大動脈, stiffness β
【背景】Norwood(NW)術後の上行大動脈(aAo)拡張が指摘されているが,実際に経年的なaAo径を測定した報告は少ない.【目的】NW術後のaAo径の推移を観察すること.またそれに影響を及ぼす因子を検討すること.【方法】心臓カテーテル検査(Cath)の大動脈造影側面像を用いて,STJおよび第1分枝の中点をaAo径として拡張期の時相で計測した.対象は,2008年以降に当院でNW術を施行した49例から二心室修復例等を除外,TCPC到達,術後Cathを終えた18例.【結果】症例は,全例がHLHSもしくはそのvariantであった.NW術後のaAo径は,中央値でBDG術前15.0mm(9.1~18.8,平均年齢0.4歳),TCPC術前18.0mm(11.4~22.3,平均年齢1.4歳),TCPC術後(1年)20.2mm(13.3~24.9,平均年齢2.7歳)であった.aAo径とNW術時の肺血流源(BTS/RV-PAconduit),大動脈弁逆流(AR)等に関しては,明らかな相関はみられなかった.なお,血管径の変化より求めた局所の血管弾性の指標であるstiffness parameter βは,TCPC術後(1年)中央値6.3(5.6~7.1)であり,TGAのJatene術後1年:中央値5.1(4.8~5.2)に比して高値であった(P<0.05).【考察】aAoは,TCPC術後1年の時点までは,既存の報告にある小児例に比して継時的な拡大傾向がみられた.今回の検討では,aAo径に関与する因子を検出できなかった.また,NW術後のaAoは弾性が低下傾向にありこれも拡張の一助と考えられた.今後さらに遠隔期でのデータを蓄積し,aAoや大動脈基部の拡大およびそれに伴うARへの適切な治療介入時期予測など,治療方針の決定に役立てていきたい.【結論】NW術後のaAoは,弾性低下傾向があり継時的に拡大傾向がみられるため個々の症例で慎重なフォローアップが必要である.