[II-O-08] Fontan型手術の適応限界とfenestrationの是非
キーワード:Fontan, fenestration, TCPC
【背景】手術技術の向上と内科管理の進歩によりFontan型手術の生存率は飛躍的に向上したが、Fontan手術適応ぎりぎりの症例に直面することも少なくない。またfenestrationを設けるべきかどうかの基準も一定の見解が無いのが現状である。【目的】Fontan手術の適応限界やfenestrationを設ける基準について検討すること。【方法】2010年1月~2013年12月までの4年間に当院でTCPCを行った128例を対象とした(IVC欠損例は除外した)。手術時年齢の中央値は2.5歳(1.0~37.0歳)。nonfenestrated TCPC手術(n-TCPC)を行った症例をN群(n=82, 64%)、fenestrated TCPC手術(f-TCPC)を行った症例をF群(n=46, 36%)とした。【結果】 病院死亡は2例(1.6%)、遠隔死亡は1例(0.8%)ですべてF群であった。術前カテデータでは、F群の方がN群よりSaO2が低く(83±5% vs 86±4%)、PAIも低かった(219±117 vs 291±129)。術後入院期間は、F群の方がN群より長かった(44±81日 vs 25±16日)が、術後ドレーン留置期間に差はなかった。術後カテデータでは、F群の方がN群より主心室の拡張末期圧が高く(9.2±3.4 vs 7.0±2.6)、肺動静脈間圧較差が小さく(4.5±1.4 vs 5.5±1.9)、SaO2が低かった(87±35 vs 94±2)。Qsに差はなかった。F群の3例(6.5%)、N群の2例(2.4%)でPLEを発症した。【考察】F群で死亡例やPLE発症例を多く認め、術後入院期間も長かったのは、術前条件が不良でFontan手術の厳しい症例が多かったことによる。術前のSaO2の低い、PAIの低い症例は、肺血管床の発育が不十分でありfenestrationを設けるべきである。しかし、fenestrationを設けた場合には術後主心室の拡張末期圧が高くなる可能性がある。【結論】肺血管床の乏しい症例はfenestrationを設けた方が良いが、心機能の悪い症例はfenestrationは無い方が良い。肺血管床が乏しく心機能も不良な症例のFontan手術適応は慎重に判断すべきである。