[II-O-10] DKS+RVPA conduit術後の虚血による心機能低下が示唆された右室低形成を伴うFontan適応の2例
キーワード:右室低形成, RVPA+DKS, 単心室
【背景】Fontan適応症例で大動脈弁下狭窄、球室孔(BVF)の狭小化が危惧される症例に体循環血流確保の目的でDKS吻合を施行するが、肺動脈低形成の症例にしばしばRVPA conduitが併用される。今回低形成の右室にRVPA conduitを施行し虚血に伴う心室機能低下を生じたと考えられた2例を経験したので報告する。【症例】症例1:SLV, TGA, CoAの診断。BVFを介した右前の痕跡的右室から大動脈が起始。PAB+arch repair(生後9日)、両側PAB(1か月)を施行。BVFの狭小化を考慮し10か月時DKS+mBTshunt術を施行したが、肺動脈の発育が不十分のためRVPA conduit(8mm)を追加した。術後心筋逸脱酵素上昇、心エコーにて収縮能低下(特に左室前壁)所見を、心電図でI,aVL及び右前胸部誘導の異常Q波を認めた。虚血性変化と判断し抗心不全薬を導入。心機能は改善傾向を認め、3歳3か月時fenestrated TCPCに到達した。症例2:TA(IIc), CoAの診断。両側PAB(生後13日)施行。PDAの狭小化を認め、1か月時にBVFの狭小化を考慮しDKS+arch repair+ RVPA conduit(6mm)を施行した。人工心肺離脱時にモニター上ST上昇を認めVTが頻発した。RVPA conduitによる右冠動脈の圧排が原因と考えられRV側のconduit再吻合,PAの位置を調整し虚血を解除した。術後ECMO管理5日間となり左側頭葉脳梗塞、低酸素性虚血性脳症を合併した。抗心不全薬を導入し心機能は改善を認め1歳11か月時fenestrated TCPC手術に到達した。【考察】右室が低形成な症例にRVPA conduitを作成する際は吻合部近位にある冠動脈の直接的な損傷、圧排だけでなく、人工血管の吻合に伴う解剖学的な進展や圧排による間接的な冠血流障害をきたす可能性が高いと考えられる。痕跡的右室を伴う左室性単心室、II型三尖弁閉鎖等の大動脈狭窄性病変に右室低形成を伴いやすい症例では同様の事象が生じる可能性があり注意が必要と考える。