[II-O-14] 主成分分析と独立成分分析を用いた先天性QT延長症候群のT波の解析 -LQT1とLQT3における解析-
キーワード:先天性QT延長症候群, 心電図, 主成分分析
【目的】先天性QT延長症候群(LQTS)ではQT時間の延長のみならず、T波の形態異常がみられる。これは再分極過程の不均一性に由来すると推測され、心室頻拍(VT)の発症にも関連する。そこで独立成分分析(ICA)および主成分分析(PCA)によるT波の不均一性の評価がLQTSの診断およびVT発症予測に有用かどうかを検証した。【対象】遺伝子検査で診断が確定したLQT1 22例とLQT3 12例を対象とした。健常者30例を対照群とした。【方法】生体アンプMA1000 (TEAC)を用いて体表面10チャネル波形を2,048Hzで記録し、A/DコンバータEC2360 (Elmec) でデジタル化した。T波領域のみを対象としてWaveletによるノイズ処理を行った後、PCAおよびランダムノイズ付加法を用いたRadical ICAで解析した。【結果】PCA の結果: PCA ratio (第2主成分/第1主成分比%)は対照群: 14.1±11.8、LQT1: 31.6±21.3、LQT3: 35.9±22.1でLQTSが有意に高値(p<0.01)を示した。ICAの結果: 対照群全例でT波が4つの基本独立成分(IC)から構成されていたのに対して、LQT1 (QTc 509±48ms) では5-6個、LQT3 (QTc 486±17ms)では6-7個のICが検出され、LQTS症例を明確に鑑別できた。IC数が多いほどPCA ratioは高い傾向を示した。LQT3ではメキシレチン内服有の方が無よりもQTcは低値を示した(QTc 468±24 vs 504±27ms)が、IC数とPCA ratioは有意差がなかった。LQT関連症状有群と無群の比較ではIC数とPCA ratioに有意差はなかったが、失神やVTを伴った症例が少なく十分検討できなかった。【まとめ】LQT1,3はいずれもICAによって過剰なT波成分が検出され、PCA ratioも有意に高値を示した。これはLQTSの再分極過程の不均一性を示している。症例を増やすことによって、VT出現や生命予後の予測に応用できる可能性がある。