[II-O-20] 遺伝性不整脈症例の心理的・社会的問題点に関する検討
キーワード:不整脈, 遺伝, カウンセリング
【背景】失神や突然死の原因となる遺伝性不整脈の患者は、突然死への恐怖、運動制限など学校生活上での悩みを抱え、家族を含めた心理的・社会的問題になることも多い。当院では遺伝カウンセリングや心理カウンセリングを取り入れてきたため、その実態を検討した。【方法】当院が開設した2010年3月から2015年1月までに受診した遺伝性不整脈の症例について診療録を調査し、臨床経過と心理的・社会的問題点を検討した。【結果】対象は男性4例、女性5例の計9例(親子例が2組)で、診断時年齢は0歳~36歳(中央値11歳7か月)であった。初診時6例に失神、1例に心室細動、1例にけいれんを認め、1例は家族歴から診断された。診断はQT延長症候群5例(うち親子1組)、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍2例、Brugada症候群2例(親子)であった。遺伝子検査は5例で行い、KCNQ1に2例、KCNH2、RYR2、SCN5Aに1例ずつ変異が認められた。2例は検査予定で、2例は患者の希望なく未施行である。治療は薬物8例、植え込み型除細動器(ICD) 3例で、学童には運動制限が全例行われていた。2012年以降遺伝科による遺伝カウンセリングを行い、検査前に遺伝学的検査の意義と注意点を十分説明するとともに、検査後も心理社会的支援を継続している。心理部門の介入は4例あり、運動制限に対する抵抗感や突然死への恐怖心から不登校となりICD植え込みを行った例、運動制限や服薬を守れず失神を繰り返した例、パニック発作を起こした例、遺伝子検査を受けたが結果説明の外来に受診できない例などがあった。【考察】遺伝性不整脈は失神や突然死の危険を伴い、しばしば運動制限も要することから年長児には大きなストレスとなり、不登校となったり運動制限が守れず再発したりした例があった。循環器科医のみのケアでは不十分と思われ、遺伝カウンセリング等を取り入れて、遺伝科医、カウンセラーなど多職種で協力して対応していくことが必要である。