[II-O-21] 肺動脈性肺高血圧の進行における炎症の関与:ヒト肺動脈性肺高血圧類似ラットモデルを用いた検討(第2報)
Keywords:肺高血圧, 血管平滑筋細胞, 炎症
【背景】前回、進行性ヒト肺動脈性肺高血圧(PAH)類似ラットモデルにおいて、内膜病変、叢状病変の形成過程に形質転換した平滑筋細胞が関わることを報告した。しかし、その進行過程への炎症の関与は不明である。【目的】肺高血圧(PH)が自然消退する低酸素モデルとの対比で、本モデルの肺血管病変の進行に炎症が関連するとの仮説を検証した。【方法】PAHラット(SuHx群)は、7週齢雄のSDラットにSugen 20mg/kg(皮下注)と3週間の低酸素暴露(Hx)後、10週間大気中で飼育し作成した。処置開始後3、5、8、13週で免疫組織染色(CD68: macrophage、CD3: T cell)、Toluidine Blue染色(mast cell)、血管周囲の炎症細胞数、PAH関連炎症性遺伝子の発現解析(real time RT-PCR)を行った。自然消退PHモデルとして3週間のHx群(処置開始後3週)、5週(Hx後2週間空気中飼育)と健常対照群を作成した。【結果】SuHx群において、右室収縮期圧(RVSP)、細胞性内膜病変、線維性内膜病変、叢状病変は進行した。Hx群では、3週でSuHx群と同様のRVSPであったが、5週で正常化した。血管周囲macrophage数は、3週で対照群(0.20個/vessel)に比べ、SuHx群(0.51、p=.047)、Hx群(0.53、p=.034)が有意に増加した。SuHx群の血管周囲macrophage数は進行性に増加した(2.6 in 13週, p=.040 vs. 3週)。血管周囲のT cell数、mast cell数は、3週で3群間に有意差を認めなかったが、SuHx群では、血管周囲のT cell数(3週 vs. 13週、p=.023)、mast cell数(3、5、8週 vs. 13週、p<.01)が進行性に増加した。肺組織での炎症性遺伝子(IL6、p<.01; MCP1、p<.01)、プロテアーゼ(MMP9, p<.01; cathepsin S, p<.01)の発現は、3週から亢進し、持続ないし進行した。一方、Hx群の炎症性遺伝子発現亢進レベルは3週でSuHx群より有意に低く(p<.01)、5週では対照レベルに低下した。【結語】自然退縮するHx群との対比で、進行性モデルSuHx群の組織病変の進行過程に炎症が関連する。