[II-O-23] 門脈肺高血圧に対して肝移植前にVolume Challenge Testを行った11例の検討
Keywords:門脈肺高血圧, 肝移植, 適応基準
門脈肺高血圧は肝移植周術期死亡率に大きく影響する。以前我々は、平均肺血圧35mmHg以下の症例が肝移植適応と報告した。また肝移植後の血行動態変化に右心機能が耐えうるか評価するためにVolume Challenge Test(VCT)を行い、VCT後(1)平均肺動脈圧40mmHg以下、(2)右心房圧10mmHg以下、(3)右室拡張末期圧10mmHg以下であれば安全に肝臓移植可能と判断している。今回、肝移植前に行った心臓カテーテル検査27症例91回セッション中、VCTを行った症例を後方視的に評価した。 VCT施行は11症例(男性2例、女性9例:年齢12.6±6.7歳)、うち9例が先天性胆道閉鎖症(1例は再移植前)、2例が門脈形成異常であり、13セッション施行した。負荷生理食塩水量は10.9±2.1mLで、VCT前の平均肺動脈圧33.2±7.9mmHg、右心房圧5.0±1.8mmHg、右室拡張末期圧8.3±1.6mmHgに対して、VCT後は各々39.9±8.3mmHg、8.6±2.0mmHg、10.7±2.2mmHgであった。全11症例のうち2例は現在肝移植待機中で、残り9例は肝移植を安全に施行可能であった。 以上から、Test時(1)~(3)全てをクリアする症例は少なく、特に右室拡張末期圧は10mmHgをわずかに超える症例が多かった。また、VCT後の平均肺動脈圧40mmHg以上が4症例あり、うち1例はさらに肺高血圧治療を1年間継続後に肝移植を行った。残り3例は重症肝不全より緊急的肝移植を行ったが、いずれも(2)、(3)の値をクリアしているために移植可能と判断した。 今回、門脈肺高血圧を伴った肝移植症例の術前データを評価し、以前報告し(1)~(3)の基準を必ずしも全てクリアしなければ肝移植が施行不能ではなかったが、ボーダーライン症例や移植待機が困難な重症肝不全症例に対する新しい基準が必要と考えられた。