[II-P-003] 左鎖骨下動脈起始異常を伴う右大動脈弓における左鎖骨下動脈狭窄
Keywords:右大動脈弓, 左鎖骨下動脈起始異常, 左鎖骨下動脈狭窄
【背景】胎児心エコーの普及に伴い心内形態異常のない左鎖骨下動脈起始異常(Aberrant left subclavian artery; aLSCA)を伴う右大動脈弓(Right aortic arch;RAA)が胎児期に多く診断されるようになったが、この疾患に合併する左鎖骨下動脈狭窄に関するまとまった報告はない。【目的】心内形態異常のないRAA with aLSCAに合併する左鎖骨下動脈狭窄について、その発症頻度、形態的・血行動態的特徴を明らかにすること。【方法】2011年1月~2014年12月までに当院で胎児診断、分娩管理を行った心内形態異常のないRAA with aLSCA 10例について、診療録を元に臨床経過を後方視的に検討した。【結果】男児6名、女児4名で1例を除いてすべて正期産で出生体重は正常範囲であった。出生後造影CTで10例中9例に狭窄を認め、うち4例が高度狭窄であった。また、血管輪に特有の気道狭窄による気道症状や嚥下障害は全例で認められなかった。高度狭窄の1例に血管内超音波を行い、血栓や石灰化はみられず血管壁肥厚による狭窄を認めた。同症例は経皮的バルーン拡張術を行い、血圧左右差が30→5mmHgと改善し以後再狭窄なく経過している。また、別の高度狭窄の1例は2歳時の造影CTで狭窄進行し左鎖骨下動脈閉塞を認め、左椎骨動脈から左上肢の血流が維持されていた。【考察】左鎖骨下動脈狭窄が発生する要因として、動脈管組織の迷入により動脈管閉鎖に伴い狭窄を生じること、狭窄部位が元来退縮する組織であることが推測される。また、左鎖骨下動脈狭窄の進行による左鎖骨下動脈盗血症候群や発達への影響が懸念されるため、胎児診断の段階で左鎖骨下動脈に着目し、CTなどの画像を用いた出生後の早期診断と治療介入の適応を検討する必要があると考えられる。【結論】心内形態異常のないRAA with aLSCAでは、早期から高率に左鎖骨下動脈狭窄を合併することがわかった。胎児、新生児期での正確な評価と必要であれば治療をすべきと考えられる。