[II-P-011] 当院における完全大血管転位の胎児診断例と出生後診断例との比較
Keywords:胎児診断, 完全大血管転位, 後方視的検討
【背景】かつて完全大血管転位(TGA)の胎児診断は困難とされていたが、近年はスクリーニング法が進歩し胎児診断例が増加している。 【目的】当院のTGA 胎児診断例と出生後診断例との経過について比較検討すること。【方法】最近10年間のTGA(1型)19例を、胎児診断9例(Pre群)と出生後診断10例(Post群)とに分類し、後方視的に比較した。【結果】Pre群/Post群で出生週数は平均39.1週(SD1.05)/39.4週(SD1.42)、出生時体重は3030.9g(249.5)/3080.4g(466.9)で差はなかった。入院24時間以内の血液ガスでの最低B.E.(base excess)は、-5.9(2.2)/-6.8(2.7)で2群間の差はなかった。BAS及びJatene手術は全例に施行しており、BAS施行日は平均1.2日(2.6)/5.4日(10.0)(p=0.11)、Jatene手術施行日は15.7日(3.2)/20.1日(7.4)(p=0.08)で差はなかったが、ともにPre群で早い傾向があった。初回入院日数は平均44.8日(19.9)/61.2日(31.3)、術前ICU入室例は4例/5例で在室日数は4.1日(5.2)/6.0日(9.1)といずれも差はなかった。術前人工換気施行例は1例/3例で有意差はなかったが、術前酸素投与例は0例/4例でPost群が有意に多かった(p<0.05)。術後ICU在室日数は12.8日(5.6)/7.5日(2.3)でPre群が有意に長かった(p=0.02)。予後はPre/Post群ともに全例が軽快退院し良好であった。【考察】1.当院のTGA症例は全例経過良好であり入院中の経過についてもPre/Post群で大きな差は認めなかったのは新生児搬送システムが一因であると考える。2.Post群で術前酸素投与例が多かったのは入院時にチアノーゼの強い症例が多かったためと思われる。3.術後ICU在室日数がPre群で長かったのは出生後からICUに入室している影響かもしれない。【結論】当院のTGA症例は胎児診断例、出生後診断例ともに短期間の観察では経過・予後良好で差を認めなかった。今後は胎児診断例の増加が予想されるため長期間の観察での比較が必要である。