第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-03 胎児心臓病学

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胎児心臓病①

2015年7月17日(金) 13:50 〜 14:20 ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:石井 徹子 (東京女子医科大学)

II-P-011~II-P-015

[II-P-015] 片方の児が先天性完全房室ブロックを呈した MD twinの1例

江口 太助1, 塩川 直宏1, 関 俊二1, 上野 健太郎1, 野村 裕一1, 西畠 信2 (1.鹿児島大学病院 小児科, 2.鹿児島生協病院 小児科)

キーワード:双胎, 先天性完全房室ブロック, 抗SS-A抗体

【背景】母体自己抗体の先天性房室ブロック(CHB)への関与は知られているが、CHBの成立には抗SS-A/Ro, SS-B/La抗体の存在は必要条件ではあるが十分条件ではなく、未だ発症機序は明らかではない。今回、一絨毛膜二羊膜性双胎(MD twin)の片方の児のみに発症したCHBを経験したので報告する。【症例】人工受精で妊娠成立しMD twinだった。在胎19週に徐脈がありCHBと胎児診断された。在胎21週に母体の抗SS-A/La抗体の高値(2,480倍)が判明しステロイド投与が行われた。他児のPR間隔も延長は認めなかった。予定帝王切開で37週3日、体重 2,022gで出生した。出生直後は心拍数70回/分程度だったが、2生日の夜から心拍数が50回/分に減少し活気不良、哺乳不良を認め心不全徴候と考えイソプロテレノール(0.1γ)を開始した。心拍数は80回/分程度に維持でき内服に変更し外来管理とした。体重増加を待ち生後6か月でペースメーカー(DDD)を植え込んだ。術後心拍数は150 bpm回/分で経過は良好である。【考察】CHBの発生機序は、自己抗体の関与と胎児側の感受性によると考えられている。母体の抗Ro52抗体が胎児心筋細胞に障害ををきたしアポトーシスを起こす。抗SS-B/La抗体はアポトーシス細胞に炎症を起こしCHBとなる。これらの伝導障害が一過性で回復するか、線維化をともなって不可逆的になるかは胎児側の感受性によると考えられており、線維化を促進するTGFβ1遺伝子多型の関与や母体細胞の胎児心筋への迷入によるマイクロキメリズムの関与の報告がある。今回の症例はMD twinで同一の遺伝子多型を有すると考えられるためマイクロキメリズムの関与を示す症例と考えられた。【結語】本例はマイクロキメリズムがCHBの発症に関与することを示す症例であると考えられた。