[II-P-022] 血管輪の外科治療成績に及ぼす胎児診断の効果
キーワード:血管輪, 重複大動脈弓, 胎児診断
血管輪術後に56%の頻度で症状が残るという報告があり診断の遅れが原因とされている(Alsenaldi, 2006)。しかし、最近、胎児心エコーで”3-vessel-trachea view”が開発され(Yagel, 2002)、血管輪の出生前診断が可能となった。出生前診断による血管輪に対する計画的外科治療の効果について検討した。【方法】過去11年間の血管輪手術24例を解析の対象としPA slingは除外した。手術適応は、1)気道症状のある血管輪、2)重複大動脈弓の診断。手術時年齢の中央値は1.8か月(18日~1才10か月)。胎児診断例が16例。病型の内訳は重複大動脈弓17例で低形成側大動脈弓を離断し(左71%)、右大動脈弓+左動脈管索7例では動脈管索を切断した。術後6か月の時点で症状の残った症例が9例(38%)いた。症状遺残に及ぼす影響因子を明らかにするため、1)術前症状の有無、2)手術時年齢、3)重複大動脈弓か否か、4)気管軟化症の有無、を説明変数として多変量解析をおこなった。【結果】『術前症状の存在』が有意な影響因子であった(p=0.002)。術前に症状のあった12例中9例(75%)で術後に症状が残った。一方、術前無症状であった12例では術後の症状遺残は1例もない。術前無症状例は全て胎児診断例で生後1.5か月で計画的に手術を施行した。胎児診断され術前有症状であったのは4例でうち2例で術後に症状が残った。術前有症状症例では、生後平均2か月で症状が出始め5か月で確定診断され手術施行は生後8か月であり、診断、治療の遅れが明らかであった。【まとめ】気道症状を呈した血管輪は、気管支喘息や気管支炎などとして治療されており診断が遅れがちで他の報告と同様、術後の症状改善度は十分ではなかった。空気がなく羊水の入った肺を通して大血管が観察できる胎児心エコーは血管輪の出生前診断に適しており、計画的な外科治療介入を可能にする有効な診断方法である。これにより血管輪の手術成績の向上が期待できる。