[II-P-036] Area-Length法による左室容積計測のpit fall ―心尖挙上心での左室計測はArea-Length法の適応になるのか―
キーワード:Area-Length法, ファロー四徴症, 心尖挙上心
【背景】Area-Length(AL)法は左室容積を求める為に用いられる手法であり、特に左室造影において汎用されている。簡便で大変有用な計測法であるが適用の限界があることは強調されていない。我々はファロー四徴症に代表される心尖挙上心の左室容積計測におけるAL法の妥当性について検討した。【方法】有意な短絡のないファロー四徴症心内修復術後(TOF:T群)15例(中央値2歳9か月)、対照群として冠動脈後遺症の認めない川崎病(Control:C群)14例(中央値6歳0か月)を検討した。左室造影正側面像にて左室長軸、及び矢状軸と左室長軸のなす角度(長軸角)を計測し、長軸矢状成分、Dodge法による左室拡張末期容積(LVEDV)を算出した。【結果】LVEDVはT群で119.5±6.3%N、C群で96.4±3.5%Nであり両群間に有意差を認めた(p=0.006)。長軸角は正側面像それぞれでT群は60.5±2.1°、3.9±4.1°、C群は35.1±1.9°、25.3±1.6°であった。長軸矢状成分は正側面像それぞれでT群は38±2mm/m、47±2mm/m、C群は67±2mm/m、68±2mm/m(体格補正値)であり、T群では正側面像の間に有意差を認め(p=0.003)、C群においては有意差を認めなかった(p=0.75)。【考察】Dodgeらの原著によれば、AL法は左室造影二方向の長軸矢状成分に相違ないことが原則となっている。本検討において、T群では長軸矢状成分は正側面像間で有意差がみられた。ただT群でも長軸角が60度を下回るような症例では、矢状成分が一致する傾向がみられた。また、T群の長軸はC群と比較して小さく計測された。AL法では正側面像それぞれにおける左室短軸が面積と長軸から計算されることから、LVEDVがT群において過大に算出された原因は、長軸が小さく計測されたことで逆に短軸が大きく計測されたことにあると考えられる。このように、TOFのような心尖挙上心に対してAL法を適用することには限界があると思われ、左室容積が臨床上重要な意味をもつ場合においては特に留意すべきである。