[II-P-037] 心臓MRIによる大動脈縮窄治療後病変の形態評価時のpitfall —下行大動脈に構造異常が疑われた3例—
Keywords:MRI, 大動脈縮窄術後, 層流
【はじめに】小児及び成人先天性心疾患領域においても心臓MRIは容量のみならず形態評価まで行われるようになってきている。今回大動脈縮窄(CoA)治療部遠位側にみられるMRI画像を評価する事を目的とした。【方法】2013-2014年に心臓MRIを施行したCoA治療後患者3例(撮影目的は心室容量・駆出率評価)を対象に、MRIは1.5T EX-HDX TWIN(GE社製)で撮影した3D-Fiesta画像で評価した。【症例】症例1:17歳 女児、CoA術後(subclavian flap: SCF)、残存大動脈縮窄(re-CoA)に対するバルーン拡張術(PTA)後、re-CoAの再増悪及び下行大動脈(dAo)内に隔壁を伴った腔が描出され、動脈瘤あるいは動脈解離が疑われた。症例2:2歳 男児、左側相同心・CoA・共通房室弁口 術後(肺動脈絞扼術、PTA for CoA、DKS吻合+両方向性グレン手術)、dAo内が前後2層に描出され、3か月後の同検査でも同様の所見であった。症例3:生後8か月 男児、房室錯位・両大血管右室起始・CoA 術後(SCF、肺動脈絞扼術)、dAo内が2層に描出された。【結果】今回施行した4件のMRIではいずれもdAoでの不均一な血流と考えられる所見を認め、内2件においては隔壁様構造が描出された。症例1は否定のために造影CTを要したが、症例2は直前の心臓カテーテル検査で大動脈瘤・解離等は否定でき、症例3は直近の心エコーなどから追加検査は不要と判断した。【まとめ】容量評価の目的で施行したMRIにて、治療後のCoAの形態評価を同時に試みた3例では正確な形態評価は困難であった。心エコー図ではCoA治療部遠位には不均一な血流パターンを示す事は一般的であるが、いずれの症例も心エコーでdAo内の層流を認めており(症例1では渦流)、そのため流速・血流方向の違いから隔壁様に描出されたと考える。不均一な流速が発生する場所では生じる可能性のあるpitfallであるが、近年の心臓MRIに求められる情報(血流由来の情報)では見誤る可能性があることを今一度留意すべきであると考えられた。