[II-P-044] 総肺静脈還流異常症における待機的手術の有用性について
キーワード:総肺静脈還流異常症, 肺静脈狭窄, 低出生体重児
【背景】総肺静脈還流異常症 (TAPVC) は、診断後すみやかに手術するのが一般的である。しかし、低体重児などにおける新生児早期の手術は、周術期及び術後肺静脈狭窄 (PVO) のリスクが高く、至適手術時期については議論のあるところである。【対象と方法】当院で2007年1月から2014年12月までに手術を施行した、合併心奇形を伴わないTAPVC 17例 (1型9例、2型2例、3型4例、混合型2例) を対象とした。17例の手術時期は、生後24時間以内が4例、生後8-13日が3例、生後1か月以上が10例であった。生後24時間以内の手術を要した例はいずれも術前にPVOの合併がみられた。生後1か月以上経過してから手術を施行した10例はいずれもPVOの合併はなかった。そのうち5例は診断時にすでに1か月以上経過しており、残りの5例が診断から手術まで1か月以上待機した (待機群) (待機期間平均 35.6日、33-38日)。待機群5例の診断時体重は平均2.88 kg (2.3-3.7 kg) であった。待機中に得られた体重増加と、術後経過について検討した。【結果】待機群における手術待機期間中に平均で0.66 kg (+0.4-0.8 kg) の体重増加が得られ、total repairを施行されている。術後経過はいずれも良好で、術後PVOや肺高血圧 (PH) の合併なく経過している。【考察】待機群は全例PVOがなくASDも大きく開存していたが、約1か月待機したところで心不全症状 (多呼吸、哺乳不良、体重増加不良など) や、PHの進行がみられ、その時点で手術となった。やはり生後早期の手術が必要な疾患ではあるが、病態増悪に注意しながら待機することで、体重増加や、新生児早期の手術回避などのメリットが得られる。【結論】TAPVCは早期手術が一般的ではあるが、PVOがない症例、特に低体重児では、待機的手術も選択肢となり得る。