[II-P-063] 進行性心臓伝導障害が疑われる2症例
Keywords:遺伝性不整脈, 進行性伝導障害, イオンチャネル病
【背景】若年者の伝導障害は稀な疾患で、突然死の危険性がある。伝導障害の原因は多岐にわたるが、心筋症や虚血性心疾患などの器質的心疾患を伴わない原因不明の進行性伝導障害を進行性心臓伝導障害と定義している。今回、本疾患と考えられる2症例を経験した。臨床経過と治療方針について考察する。【症例1】11歳男児、小学校1年時の学校心臓検診で徐脈、完全左脚ブロックを指摘された。心エコーで器質的異常はなく、心機能は正常範囲であったため、経過観察となった。小学校2年時に、トレッドミル運動負荷試験で2:1の房室ブロックと完全房室ブロックを認め、運動制限下で経過観察とした。小学校5年時の体育授業中に失神を認め救急搬送となった。心拍数300回/分の多形性心室頻拍を認め、進行性の伝導障害と致死性不整脈に対し除細動付きペースメーカの植込みを行った。【症例2】15歳男児、中学校1年時の学校心臓検診で完全左脚ブロックを指摘された。心エコーで器質的異常はなく、心機能は正常であった。トレッドミル運動負荷試験で2:1の房室ブロックを認めたが、運動時の心拍応答は良好であり運動制限は行わず経過観察としていた。遺伝子検査でSCN5Aの遺伝子変異を認めた。中学校3年時に運動時心拍応答の不良と高度房室ブロックを認めた。自覚症状はなく、経過観察中である。【結論】本疾患は遺伝子型と表現型の関連や予後予測因子など未だ不明な点が多い。本疾患の鑑別診断には、二次性に伝導障害をきたす疾患の否定と遺伝子検査が有用である。遺伝子結果からは、ある程度の臨床経過を予測することができる。心事故を起こす前に本疾患を診断し、ペースメーカを適切な時期に植え込むことが重要である。