[II-P-069] ペーシング治療中に心室頻拍を呈した先天性完全房室ブロックの1例
キーワード:先天性完全房室ブロック, 心室頻拍, ペーシング
【背景】先天性完全房室ブロック(CCAVB)に伴う失神の原因として,徐脈によるAdams-Stokes発作があるが,心室頻拍の報告は少ない.CCAVB経過中に徐脈に伴うQT延長をきたすことや遺伝学的背景がCCAVBとQT延長症候群でオーバーラップすることが知られている.今回,経過観察中に意識消失を認め,ペーシング治療中に心室頻拍(VT)を呈した症例を経験したので報告する.【症例】母体膠原病なし.妊娠24週より胎児徐脈を指摘され,妊娠38週に自然分娩で出生.心拍数50bpm前後で経過し,ペースメーカ植込み術が考慮されたが,両親が拒否したため,β刺激薬・利尿薬内服で経過観察された.3歳時に運動時・排便時に失神発作のエピソードを2回認めた.その1ヶ月後,運動中に意識消失を認め,救急搬送された.心機能低下(LVEF 0.4)・徐脈(40bpm)を認めたため,経静脈的ペーシング(VVI 80 bpm)を施行.集中管理中に刺激・体動に伴って頻回に心室頻拍を認め,計3回の電気的除細動を要した.電解質異常・ペーシング不良の所見を認めなかった.アミオダロン投与およびペーシングレートを上げ,その後心室頻拍は認めずに経過.血液培養陽性であったため感染性心内膜炎を考慮し,心外膜リードによる体外式ペーシングを行いつつ,計6週間の抗生剤投与した.体格が小さかったため,植込み型除細動器ではなくDDDペースメーカの植込みを選択し,アミオダロン内服継続とした.以後,心機能は徐々に改善し,心室性不整脈の出現は認めていない.QT延長症候群に対する遺伝子検査では有意な変異を認めなかった.本症例ではペーシング中に心室性不整脈を認めたが, 徐脈での長期経過に伴う心筋障害の影響や心筋炎の可能性も否定できない.【結語】CCAVBの経過観察症例では,徐脈のみならず頻脈性不整脈の可能性も念頭に慎重な経過観察が必要である.