第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-10 心筋心膜疾患

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心筋症①

Fri. Jul 17, 2015 1:50 PM - 2:20 PM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:武田 充人 (北海道大学)

II-P-074~II-P-078

[II-P-075] 酵素補充療法により心不全進行を認めない長期生存肥大型心筋症合併乳児型ポンペ病の経過

吉永 大介1, 馬場 志郎1, 田口 周馬1, 豊田 直樹1, 平田 拓也1, 土井 拓2 (1.京都大学医学部付属病院 小児科, 2.天理よろづ相談所病院 小児科)

Keywords:ポンペ病, 肥大型心筋症, 酵素補充療法

【背景】ポンペ病はライソゾーム酵素である酸性αグルコシダーゼの欠損または活性低下を原因とする常染色体劣性遺伝のライソゾーム蓄積疾患である。中でも乳児型は著明な心肥大、筋力低下を特徴とし心肺不全により生後12か月以内に死亡する急速進行性の経過をとる最重症型とされ、乳児型ポンペ病に対するERTの長期予後に関する報告は数少ない。【症例】10歳男児。出生時から持続する血清CK高値、生後3か月から体重増加不良および発達不良を認めた。また、生後5か月時に気管支炎のため入院した際に施行された胸部X線写真から心疾患を疑われ、心エコー検査で肥大型心筋症(HCM)と診断された。以上の所見からポンペ病を疑われ、生後8か月時に培養皮膚線維芽細胞において酸性αグルコシダーゼ活性低下(0.0 nmol/mg prot/hr)を認めたため乳児型ポンペ病と確定診断された。生後8か月より酵素補充療法(ERT)として2週に一度のマイオザイム投与を開始した。左室心筋重量係数はERT開始前451.7g/m2.7(z score 12.0)だったが治療開始より半年、1年、2年、10年でそれぞれ343.0g/m2.7(z score 10.1)、139.8g/m2.7(z score 4.7)、147.7g/m2.7(z score 5.1)、31.2g/m2.7(z score -0.6)となり、心筋肥大は改善した。また、治療前は重度であった僧房弁逆流も治療開始1年半でほぼ消失し、拡張障害の改善も認めた。3歳時に気管切開術を施行して以降、呼吸状態も安定しており在宅人工呼吸管理を継続している。【結語】乳児型ポンペ病の診断後早期にERTを開始したことでHCMに伴う心不全を回避できたため長期生存が可能となった。ポンペ病に合併するHCMは可逆性であり早期治療により著明な改善が見込める可能性がある。また、本邦においてERT施行長期生存例は未だ少なく、心機能を含めた長期経過を提示する。