第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-10 心筋心膜疾患

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心筋症①

Fri. Jul 17, 2015 1:50 PM - 2:20 PM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:武田 充人 (北海道大学)

II-P-074~II-P-078

[II-P-078] 胎児期より肥大型心筋症(HCM)を呈したミトコンドリア呼吸鎖異常症(MRCD)の1例

平海 良美, 内藤 昭嘉, 松永 卓明, 西田 吉伸, 飯尾 潤, 毎原 敏郎 (兵庫県立塚口病院 小児科)

Keywords:肥大型心筋症, 胎児診断, ミトコンドリア

MRCDとは、ATP産生を担うミトコンドリア呼吸鎖の酵素活性低下によってエネルギー産生障害をきたす、いわゆるミトコンドリア病としてしられてきた疾患である。先天性代謝異常で最も頻度が高く、発症率は1/5000といわれている。今回、胎内で心拡大、HCM、子宮内発育遅延を指摘され、出生後高乳酸血症をきたしMRCDと診断された症例を経験した。【症例】母体33歳、2経妊2経産。第2子が子宮内発育遅延であった。他院にて在胎27週より子宮内発育遅延のため管理入院されていた。33週0日の胎児エコーで胎児発育停止、心拡大、心嚢液貯留を指摘され当院産婦人科へ母体搬送となった。当院の胎児エコーでは羊水過少、小脳低形成、HCM、心室中隔欠損、心拡大(CTAR48%)を認めた。オキシトシンストレステストで胎児心拍低下がみられたため、帝王切開術で在胎週数33週3日、体重1124g、Apgar score7点/1分、8点/5分で出生した。入院後呼吸減弱のため人工呼吸器管理となった。心エコーでは左室緻密化障害様で心機能は良好であった。高乳酸血症と代謝性アシドーシスを呈し、メイロン投与にても改善せずMRCDが疑われた。ビタミンカクテル療法とメイロン持続投与を開始したが、高乳酸血症が進行し第5病日永眠となった。腹膜透析は家族が希望されなかった。病理解剖の許可をいただき、心筋、骨格筋の呼吸鎖活性測定よりMRCDと診断された。現在、家族の遺伝子検索を施行中である。 【考察】MRCDと診断された症例の45%は新生児期発症で、その63%が死亡しており予後が悪い。特に心筋症合併例は症状が急速に進行し、生後数日で死亡した例、突然死した例の報告がある。今回我々は胎児期よりHCMと診断し、適切な分娩方法で娩出できたため比較的早期にMRCDの可能性を考慮し診断に至った。救命は困難であるが、確定診断を行うことによって次子への早期からの対応が可能になるため、家族にとって診断の意義は大きい。