[II-P-090] 急速に顕在化した心不全により緊急帝王切開となった、ドキソルビシン心筋症合併妊娠の一例
Keywords:ドキソルビシン心筋症, 妊娠, 帝王切開
【背景】小児期心疾患の予後が改善し小児循環器外来患者の平均年齢が上昇する中、患者の妊娠・出産管理に関与する機会も増えてきている。京都大学小児科心臓外来では、最近16年で17件の妊娠に関与し、ほぼ順調な経過を得ているが万全ではない。【目的】今回我々は、満期まで順調に経過しながら、陣痛発来待機中急速に心不全を来し緊急帝王切開となった1例を経験した。娩出のタイミングにつき考察が必要と考えられ、諸先生方のご意見も伺いたく、報告する。【症例】分娩時32歳の女性。10歳時に急性骨髄性白血病を発症。当科にて多剤併用大量化学療法を受け、現在まで完全寛解を維持。11歳時に心不全発症し、使用したドキソルビシン(以下DXR)が500mg/m2に達しており、DXR誘導性心筋症と診断された。14歳以降はACEIやβ-blocker、利尿剤、ジギタリス製剤の内服でNYHA 1~2°に安定、心臓外来定期通院中であった。【経過】27歳で結婚。31歳時自然妊娠成立。ACEIを減量中止したが心機能悪化なく、児の発育も含め妊娠経過も良好。無痛分娩を計画していたが陣痛発来なく、在胎38週0日より分娩待機のため入院となった。在胎38週3日、BNPのさらなる上昇あり、心エコーでTR-PG増大認めたが、LVDd, LVEFの変化なく本人の自覚症状もなし。陣痛発来なく、金曜日でもあったため、週明けより陣痛誘発を行うこととしたが、在胎38週5日(月曜日)未明より肺うっ血による起座呼吸出現し心エコーでLVEFの低下あり。子宮口開大乏しく緊急帝王切開となった。術後子宮出血が持続し、子宮動脈塞栓術施行。翌日抜管、2日後一般病棟移床するも、その翌日(産褥3日)未明に再度起座呼吸出現しCCU入室。産褥11日CCU退出後は体重変化、胸部X線写真やBNPをフォローしながら心臓リハビリを継続し、産褥27日で退院。【考察】母子とも喪うことなく出産は終えたが、分娩のタイミングやコンディショニングに課題を残す症例であった。