[II-P-093] 海外での卵子提供にて妊娠したモザイクターナー症候群の妊婦例
キーワード:ターナー症候群, 妊娠, 大動脈解離
【背景】近年、不妊治療の普及により、遺伝子検査にて明らかになったモザイクターナー症候群(以下、TS)女性の妊娠例が増加している。TSでは25-50%に大動脈二尖弁、大動脈縮窄などの心血管疾患の合併を伴い、妊娠によって高血圧、大動脈解離のリスクが高いとされるが、Low-levelのモザイクTSでの検討は、小規模での報告にとどまる。今回、卵子提供により海外で胚移植を受けた、モザイクTSの33歳妊婦を経験したので、文献的考察を加えて報告する。【症例】33歳女性。身長153cm、体重43kg。早発閉経のため、10代から月経異常があり、カウフマン療法等を行っていた。妊娠希望があり卵巣機能不全の精査を行ったところ、モザイクTS(45,X(5)/47,XXX(1)/46,XX(174))と診断。外表奇形は明らかでなかった。海外で卵子提供を受けて妊娠。MRI、CT検査では、大動脈のpseudo coarctationと門脈閉塞に伴うcavernous transformationを認めた。大動脈解離の予防目的に妊娠20週5日(7/29)よりビソプロロール内服開始。妊娠中に内視鏡を行い、食道静脈瘤を否定。心血管系のイベントなく、妊娠37週0日にて、帝王切開にて2852gの男児を出産。妊娠経過中の心臓超音波検査では、上行大動脈径は妊娠前25.7mm(19.4mm/m2) に対して、妊娠中は最大26.8mm(20.2mm/m2)。出産後、29mm(21.9mm/m2)に拡大したが、妊娠の禁忌とされる、25mm/m2は超えなかった。【考察】 TS妊婦の大動脈解離による周産期死亡は2%に及ぶと報告されている。モザイクTSについては、解離に関連する心血管リスクは一般と変わらないとの報告もあるが、小規模な検討であり、明らかにされていない。今回の我々の症例では、心血管系のイベントを認めなかったが、モザイクTS妊婦については妊娠前のリスク評価とリスクについての説明が必要と考えられた。今後、症例を積み重ねてリスク評価を検討していく必要がある。