[II-P-100] Fontan循環における運動中の酸素脈(O2 pulse)とその経時的変化(O2 pulse kinetics)
Keywords:Fontan手術, 酸素脈, 心肺運動機能
【背景】酸素脈(O2 pulse)(=酸素摂取量/心拍数)は1回拍出量に相当する値で、運動中の酸素脈経時的変化(O2 pulse kinetics)は運動中の1回拍出量経時的変化を反映する。肺への駆動心室のないFontan循環における運動中のO2 pulse kineticsの特徴を検討した。【対象と方法】Fontan術後(全例TCPC)患者57名(女30)、年齢8.2(7.2-24.8)歳、Fontan術後5.2(4.1-11.6)年においてトレッドミルあるいはエルゴメータによる心肺運動機能負荷試験を行い、VO2、心拍数から安静時・負荷後1・3・5分および最大のO2 pulse(体表面積補正)を算出した。【結果】安静時O2 pulse 2.1(1.2-3.3)ml/beat・m2に対して、最大O2 pulse 6.0(3.9-10.3)ml/beat・m2であった。最大O2 pulseは呼吸数(r=0.38,p=0.002)に相関しており呼吸運動が運動時の1回拍出量増加に影響していた。O2 pulse kineticsは安静時O2 pulseを基準として負荷後1分;186%、3分;225%、5分;242%、最大負荷時;290%(平均値)の増加であった。O2 pulse kineticsが不良な19例と良好な38例に関して心係数・PA index・肺血管抵抗・中心静脈圧は差がなかったものの、O2 pulse kineticsが良好な症例では運動中の心拍増加数が良かった(36 vs 25 bpm, p=0.019)。【考察】運動中の心拍出量増加において運動初期には一回拍出量増加が寄与し、最大運動負荷に近づくにつれて心拍数増加の寄与が大きくなることが知られているが、Fontan循環においては1回拍出量増加不良と心拍応答不良が重なり運動機能低下を招く。運動中の1回拍出量増加に呼吸運動の関連は示唆されたものの、その十分な増加を得る因子には更なる検討が必要と考えた。