[II-P-103] 心室中隔欠損に合併する僧房弁閉鎖不全とその経過
Keywords:心室中隔欠損, 僧帽弁閉鎖不全, 術後
【背景】心室中隔欠損(VSD)の手術成績は満足できるものとなったが、しばしば術前に左室容量負荷のための弁輪拡大や僧帽弁逸脱のため僧房弁閉鎖不全(MR)を合併する例を認める。左室容量、弁輪拡大は心内修復術後改善するとされるが、VSDに合併するMRの長期的な予後は明らかではない。MRの残存は、弁逆流の増悪、感染性心内膜炎(IE)の発生など長期予後に影響しうる。【目的】VSDに合併するMRの特徴と頻度、その予後を検討すること。【方法】当院で2歳未満、Qp/Qs1.5以上で心内修復術を行った心室中隔欠損を後方視的に検討。術前のMR合併群(MR(+)群)、MR非合併群(MR(-)群)としMR群とnonMR群の特徴を検討した。また心内修復術後1年以上の経過観察が可能であったMR(+)群 MR(-)群に関して、術後のMRの有無、程度を検討した。【結果】対象症例は179例でMR群は84例(47%)であった。心臓カテーテル検査時の%LVEDVはMR(+)群で有意に高値であった。カテーテル検査時年齢、Qp/Qs、平均肺動脈圧に有意差はなかった。手術で僧帽弁に対する介入を行った例はなく、経過観察可能例でIEの合併やMR増悪による手術介入を必要とした例はなかった。MR(-)群は術後平均6.7年の追跡で65%の症例でMRが(-)であった。一方MR(+)群では術後平均6.4年の追跡でMRが消失していた例は54例中11例(20%)であった。消失した例はすべて軽度以下のMRであった。術後MRが改善した例は31例(57%)、18例(33%)は不変、5例(9%)で軽度増悪した例を認めた。【結語】容量負荷を伴うVSDには高頻度にMRを合併する。術後軽快する場合が多いが、多くの症例でMRは残存し、再増悪する場合もある。MRを残存させないより後遺症の少ない治癒を目標にするにはMRの進行がない時期での手術介入が望ましい。