[II-P-106] 総肺静脈還流異常を伴った右側相同(無脾症候群)機能的単心室症例の治療成績についての検討
キーワード:heterotaxy, TAPVD, 無脾症候群
[目的]総肺静脈還流異常を伴った無脾症候群症例の治療成績について後方視的に検討し,当院における遠隔期の成績を検討した.[対象]2005年1月以降当院において手術介入を行った右側相同・機能的単心室に総肺静脈還流異常を合併した31例.TAPVDの分類はIa 6例,Ib 7例, IIb 14例, III 4例であった.胎児診断例が24例,7例が外部からの紹介であった.[結果]全体の生存率は77%で,生存症例中1例はBDG時TAPVD repairを行うもPVO残存しTCPC candidateから外れたが,残りはTCPC到達或いは待機中である.死亡症例7例中6例(85%)が生後24時間以内にPVOにて緊急手術あるいは緊急Stent留置を行った症例であり,うち2例はBDGまで到達したがいずれもその後循環不全にて失っている.Stent留置はVV-SVC接合部に対して留置を行ったIb症例1例と,静脈管内に留置を行ったIII症例1例でどちらも十分なPVO解除に至らなかった.出生後早期PVO治療介入例は8例(22%)で,Ia群 3例:50%(生存1例),Ib群 2例:29%(生存0), III群3例:75%(生存1例)で生存例は2例(6.5%)であった.いずれも胎児診断例で胎内よりPVOが予想された症例であった.生存例は1例がTCPCに到達し1例がTCPC待機中である.IIb群では早期PVO症例は認めなかった.PA症例は14例(22%)で,早期PVOを認めない12例のうち4例に対して(Ia,Ib,IIB,III各1例)BTSをせずPGE1使用にてPDA開存を維持しながら3月齢時にBDG+TAPVD repairを行い良好な経過を得ている.房室弁閉鎖不全に対する早期治療介入症例は今回検討の症例中には居なかった.[考察・結語]心外型総肺静脈還流異常を合併する無脾症候群は出生直後よりPVO症状がある場合生命予後が非常に悪く,Stentによる狭窄解除が困難な場合があり治療方法の選択に慎重な検討が必要である.PA症例でPVO(-)の場合,手術侵襲にて肺血管抵抗が変動し肺血流コントロールに困難が予想される際,PDA開存維持にて1st palliationに早期BDGを目指す治療戦略も有り得る.