[II-P-113] Fontan循環成人例における潜在性甲状腺機能低下と血行動態との関連性の検討
キーワード:Fontan循環, 甲状腺機能, 心機能
【背景】成人先天性心疾患患者では、約10%に潜在性甲状腺機能低下がみられることが報告されているが、その機序や血行動態との関連性はあきらかになっていない。【目的】Fontan循環成人例における甲状腺機能異常の頻度と、心血行動態との関連性について検討すること。【対象・方法】2009年から2013年に当院ハートセンター成人先天性心疾患外来へ紹介された成人Fontan術後患者94症例(男48、女46、平均年齢23.7歳±5.27)を対象に、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離T4(fT4)と血行動態(中心静脈圧・肺血管抵抗・心係数・SpO2・BNP・EF)についての関連性を検討した。【結果】内服治療を要する甲状腺機能異常の症例はなかった。free-T4 1.67±1.82 ng/ml であり、TSH 2.49±1.44μU/mlで、TSHは12例(12.8%)で基準値(4.2)を超えていた。free-T4はSpO2と有意な正の相関(p=0.037)を示し、TSHは有意な負の相関(p=0.009)を示した。その他の血行動態に関してはfree-T4・TSHとの有意な相関は認めなかった。【考察】今回の検討で、Fontan循環成人例における潜在性甲状腺機能低下の頻度は、他の成人先天性心疾患患者に比べても高くないことがわかった。また、潜在性甲状腺機能低下は低酸素血症と関連があることが推測された。動物実験では低酸素状態によって誘導される転写調節因子の低酸素誘導因子-1(HIF-1)が、3型脱ヨード酵素を介してT3を非活性型のrT3に変換し、甲状腺機能が抑制されるとの報告がみられ、低酸素血症が潜在性甲状腺機能低下の一因となっている可能性がある。