[II-P-129] 右心バイパスにおけるエンドセリンシステム―肺組織からの検討―
Keywords:右心バイパス, 肺高血圧, エンドセリン
【背景】右心バイパスにおけるエンドセリンの役割は重要である。エンドセリンアンタゴニストであるボセンタンなどにより、以前ではFontan循環が成立しないとされていた肺高血圧症例であっても、近年は治療対象となり、右心バイパスの適応は拡大してきている。【目的】右心バイパス症例の肺組織から肺動脈、エンドセリンおよびその受容体・システムの評価をすること。【方法】Failed Fontanの1例とFontan循環が成立している2例の肺組織から比較検討を行った。Failed Fontanの1例は、TCPC時に肺生検を行ったが、TCPC術後30日にIVCの閉塞が判明し、BCPSへのtake downを余儀なくされた。Fontan循環が成立していた2例は併発症手術時(<1>三尖弁閉鎖症、横隔膜縫縮術、<2>単心室、無脾症PVO解除術)に肺生検を行った。肺動脈の評価は中膜で行った。またreal time PCRでエンドセリンの前々駆体であるppET-1、エンドセリン受容体type A(ETAR)、エンドセリンtype B(ETBR)の発現を調べた。肺動脈中膜は確認できた肺動脈を測定し、回帰分析を行って半径100μmにおける中膜に換算し比較した。【結果】Failed Fontan症例の肺動脈中膜は25.4μmで他の2例(<1>7.6μm<2>15.6μm)と比較して著明に肥厚していた。またFailed Fontanの症例は他の2例よりもppET-1の発現濃度が増大していた。ETAR、ETBRについては<1>で発現は増大していたが、<2>では発現は減少していた。【考察】Fontan循環が成立しうる中膜肥厚のcut off値が11.6μmという報告があるが、対象症例<2>のようにcut off以上に肥厚していてもFontan循環が破綻していない症例もある。【結論】Failed Fontan症例において著明な中膜肥厚、ppET-1の発現の増大を認め、循環破綻の予測因子である可能性が示唆された。中膜肥厚を認める症例は、Fontan循環の破綻が危惧されるため、今後も慎重な観察が必要である。