第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-17 心血管発生・基礎研究

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心血管発生・基礎研究③

Fri. Jul 17, 2015 1:50 PM - 2:20 PM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:内田 敬子 (慶應義塾大学)

II-P-132~II-P-136

[II-P-134] 低酸素環境下に飼育した左肺動脈結紮APCAモデルラットにおけるGene chipを用いた新生血管の分子生物学的特徴

伊藤 怜司1, 浦島 崇1, 糸久 美紀1, 馬場 俊輔1, 藤本 義隆1, 飯島 正紀1, 河内 貞貴1, 藤原 優子1, 小川 潔1, 南沢 亨2 (1.東京慈恵会医科大学 小児科学講座, 2.東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

Keywords:血管新生, 体肺側副血行路, 低酸素血症

【背景】単心室循環の様な肺血流減少性心疾患では体肺側副血行路(APCA)がしばしば増生し、肺血管床の発育抑制やリモデリングに影響を与え、心室の容量負荷から心不全や胸水の原因となり予後に影響を与えている。しかし、APCAの発生機序に関する詳細な検討はほとんどなく不明な点が多い。【目的】APCA発現モデルを作成し発生機序を明らかにすること。【方法】生後5週のSDラット(100~150g)に対し左側開胸下に左肺動脈を肺門部で結紮し、低酸素環境下(FiO2 10%)で飼育した。3週間の飼育後に肺を摘出し、組織学的及び分子生物学的に評価した。血流量や飼育環境の影響を評価するため、右肺や大気下飼育モデルと比較、及び対照ラットと比較を行った。各々の肺上葉より抽出したtotal RNAからgene chipを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。【結果】肺容量は右側で拡大、左側は縮小し上葉は胸郭と癒着し、左肺は癒着部の胸膜肥厚と肺内へ迷入する多くの新生血管をAPCA発現モデルで認めた。右肺で同様の所見は認められず、血流増加に伴う中枢肺動脈径の拡大が認められた。Gene chipによる検討では多くの遺伝子が対照と比較し上昇し、特に低酸素飼育モデルでは左肺で細胞骨格に由来する遺伝子を中心に増幅を認め、ミオシン軽鎖をコードするMyl1が900倍と最も増幅し、左右肺の比較でも同様にMyl1が550倍と最も増幅していた。大気飼育モデルでは炎症や組織修復に由来する遺伝子が増幅し、Mt3が540倍と最も増幅していた。【結論】左肺動脈結紮ラットを用いて新生血管に関する遺伝子発現を検討した。分子生物学的検討よりミオシン軽鎖を中心とした細胞骨格由来の遺伝子増幅を認めた。血管形成には壁細胞移動が必須であり、その駆動力に細胞骨格の再構成が重要である。飼育環境の差異から、低酸素環境によって血管新生が促進していることが示された。今後、低酸素環境による細胞骨格再構成に関わる因子を追加検討する予定である。