[II-P-137] 冠動静脈瘻に合併した大動脈弁輪拡張症に対してBentall手術および近位弓部置換術を施行した一例
キーワード:大動脈弁輪拡張症, 冠動静脈瘻, Bentall手術
【背景】大動脈弁輪拡張症(AAE)は大動脈弁閉鎖不全(AR),大動脈瘤,解離,破裂などのおそれがあり,適切な時期での治療が望まれる疾患である.今回,冠動静脈瘻(CAVF)に対して幼少期に治療を行い,遠隔期にARを合併した進行性のAAEが発症し,これに対してBentall手術および大動脈近位弓部置換術を施行し,外来経過観察中の成人患者について報告する.【症例】27歳男性,日齢7に呼吸障害で入院し,CAVF(右冠動脈右室瘻)による肺血流増加と右冠動脈領域の心筋虚血を認め,生後1か月に冠動脈瘻閉鎖術を施行した.以後は心筋虚血も改善し,アスピリンの内服を継続した.運動負荷心電図,負荷心筋シンチでも心筋虚血はみられなかった.10歳頃より右Valsalva洞の拡張が進行し, 19歳時大動脈基部が55mm,大動脈弁逆流が軽度あり,高血圧はなし.23歳時の再検査では大動脈の基部拡張63mmへ進行した.23歳時の心カテでは大動脈拡張は基部から大動脈弓まで及んでおり,大動脈基部は53~61mm,ARはSellers II度であった.26歳時にBentall手術および大動脈近位弓部置換術を施行.現在大動脈弁輪径は15.9mm(標準値22.7mm),Valsalva洞 22.4mm,上行大動脈径21.6mmでARはなく,現在warfarin,losartan内服で外来経過観察中である.CAVFとAAEの合併についての報告は少ない.我々の経験した症例から,治療の適切な時期やその後の管理等について,検討を加えたい.【結論】CAVF治療後遠隔期に発症したAAE,ARに対してBentall手術および大動脈近位弓部置換術を施行した.ARが明らかになってから遠隔期での治療であったが,術後経過は良好と考える.