[II-P-139] 急速に右腎動脈閉塞をきたした高安動脈炎の一小児例
キーワード:Takayasu Arteritis, Heart Failure, Renal artery occulusion
【背景】高安動脈炎(以下TA)は免疫学的機序を背景とし、大動脈や主要分枝に血管炎が起こる。推定発症時から診断、治療開始まで長期間経過していることが多く、治療開始時点で血管病変が進行し高度狭窄・閉塞している例が散見される。今回、心不全症状から当院紹介となった男児が、入院して診断までの2週間で急速に右腎動脈閉塞をきたした症例を経験したため報告する。【症例】11歳男児。生来健康で、2年前から体重減少がみられていたが他に症状を認めなかった。20XX年10月、感冒を契機に全身倦怠感・易疲労感が出現した。前医で重度心不全および高血圧、右腎動脈狭窄を指摘され、精査加療のため同年11月に当院紹介された。高血圧、頻脈、多呼吸、III音聴取、起坐呼吸など心不全症状がみられ、左室駆出率は20%程度であった。造影CTでは極めて細い右腎動脈を認めるともに、下行大動脈の壁不正、腹腔動脈および上腸間膜動脈起始部の狭窄がみられた。腎レノグラムで右腎は右:左=1:2程度の機能を保持していた。まず利尿薬、末梢血管拡張剤、PDEIII阻害剤などの心不全治療を開始し、血管炎の精査を継続した。入院2週後に高安動脈炎確定診断に有用なFDG-PET検査を施行した際に右腎へのFDG集積を認めなかった。その後、ステロイド内服、抗血小板薬・抗凝固薬でも右腎動脈閉塞は再開通せず、右腎はレノグラムで無機能腎パターンとなり、画像検査で委縮がみられはじめている。【考察】小児TA症例の診断までにかかる期間は平均15か月と報告されている。しかし、TAの血管病変は極めて急速に進行する症例が存在する。よって、不可逆な合併症を予防するために可能な限り早期に炎症の沈静化を図る必要がある。