[II-P-140] 本人・母ともに抗SS-A抗体異常高値で、出生後に進行性に上行大動脈拡張を認めた先天性完全房室ブロックの1乳児例
キーワード:上行大動脈拡張, 先天性房室ブロック, 抗SS-A抗体
【背景】母体抗SS-A抗体の移行による先天性完全房室ブロック(CCAVB)に合併する上行大動脈拡張の報告が近年海外で散見されるが、我々が知る限り本邦での報告はない。【症例】母41歳、初産婦、人工授精で妊娠成立。在胎20週に胎児徐脈を指摘。心内構造異常はなく母体抗SS-A抗体(≧1200.0 U/mL)の移行によるCCAVB(心室拍数50bpm台)と診断し、ベタメサゾン・リトドリンの経胎盤投与を行なった。出生直後に一時的ペーシングリード植込み術施行。V pace 80ppmで管理したが、日齢21にリード断線を来した。自己心室拍数60bpm前後で心不全徴候なく、期間を置いて永久的ペースメーカ植込み術(PMI)の方針とした。経過中の心エコー図検査(UCG)で上行大動脈拡張を認め、日齢5時点で+1.0SD、日齢35では+3.0SD、日齢53(UCG、3D-CT)では上行大動脈径13mm(+4.1SD)、大動脈弁輪径9mm(+1.5SD)、大動脈弓径6mm(-1.5SD)と進行した。家族歴・理学所見・UCG所見からMarfan症候群・Loeys-Dietz症候群・大動脈二尖弁等は否定的であり、血管炎の様な病態を疑いガンマグロブリン投与し、その後上行大動脈拡張は改善(月齢3時点で+2.3SD)し、抗体値は140.9 U/mLまで低下した。月齢3で永久的PMIを施行、心不全症状なく外来経過観察中。【考察】CCAVBに合併する上行大動脈拡張のリスクとして、母体抗SS-A抗体陽性が報告されている。一方でこれまでのCCAVB自験例の母体抗体価と上行大動脈拡張には相関は無く、母体抗体価だけでない多様な因子の影響を考える。