[II-P-155] ヘパリン非使用下の吻合による体肺動脈短絡術例の検討
Keywords:体肺動脈短絡術, 抗凝固, 手術侵襲
【目的】体肺動脈短絡術(BTS)は確立された術式であるが,とくに新生児期の成績には未だ改善の余地が残る.当院では手術時間の短縮,手術侵襲の軽減を目的に,2012年1月から吻合後にヘパリンを全身投与する方針に変更した.この方針変更の前後で主に手術時間短縮に対する効果と,血栓性合併症の頻度などについて検討した.【方法】対象は生後6ヵ月未満に初回手術としてBTSを行った症例で,2012年1月以降のヘパリン非投与群36例(NH群)と,2008年4月から2011年12月までのヘパリン投与群36例(H群)とした. 【結果】全72例の疾患の内訳は,TOF 22例(PA 14例,PS 8例),SV 21例,DORV 7例,PA-IVS 6例,cTGA 4例,TA 4例,他8例だった.H群,NH群でそれぞれ,男:女比:20:16,22:14例,在胎37週未満:2例,2例,手術時日齢:50.5±27.8,40.3±28.5日,体重:3.7±0.8,3.6±1.3 kg,手術創(正中:側方) :21:15,20:16例,PDA手術時開存(うち術中閉鎖)例:29 (15),25 (21)例,人工血管径(3.0: 3.5: 4 mm) :8: 19: 9,16: 14: 6例だった. H群,NH群で新生児が6 ,14例,体重3 kg未満が4,14例と,NH群でよりリスクの高い例が多かった.手術時間はH群182±54,NH群187±46分と差はなかったが,同一術者のみで比較すると170±48から156±27分へと約15分短縮傾向があった.術後人工呼吸期間は4.3±2.9,5.3±3.1日と差はなく,術中,後に血栓性閉塞を疑い再吻合や再開胸を要した例は各群4,5例で差はなかった.動脈遮断中に末梢側に血栓を生じた症例はなかった.術後補助循環を要した例はH群2例,NH群1例で差はなく,いずれも離脱,生存退院した.入院死亡は,H群の頻拍発作例とNH群の骨髄異常増殖症例の各群1例ずつで差はなかった.【考察および結語】ヘパリンの全身投与非使用下の吻合による体肺動脈短絡術は,明らかな血栓性合併症の増加もなく,手術時間を短縮できる傾向にあり,低侵襲化に有効と考えられた.