[II-P-159] 乳児期胸骨正中切開後の竜骨型鳩胸に対する矯正装具の開発
キーワード:胸郭変形, 矯正装具, 胸骨正中切開後
【背景】乳児期の胸骨正中切開後では、骨化が十分でない胸骨への手術侵襲が加わることにより横隔膜前方部の発育不良、肋骨及び肋軟骨の過剰発育、および胸骨分節の癒合異常が生じる。また多段階による複数回の再胸骨正中切開が行われる。これらを原因として竜骨型鳩胸がしばしば発生する。この胸郭変形の理想的な予防法はなく、現時点では変形発生時の装具着用による矯正が行われている。現在市販される矯正装具は、変形部のみならず胸郭全体を圧迫する構造であり、肺胞および胸郭の成長と肺機能の発達に重要な時期の患児への装着は様々な懸念が存在する。【目的】胸郭全体ではなく、胸骨突出部のみに適度な圧迫力をかけることで変形の予防や増悪を防止する竜骨型鳩胸矯正装具を新規開発すること。【方法】本装具は、変形し突出した部分を除いた胸郭の形状にフィットした外郭と突出部のみに圧力発生をするパッドを有する構造体であり、伸縮性ベルクロ素材で圧力を調整する。開発・実用化にあたり、軽量骨格、圧迫部の低反発素材、そして快適性を追求する吸温性素材など構成パーツの選定と製品デザインを産学連携事業により複数の企業の協力を得た。【対象】同意が得られた13例(うちダウン症4例、複数回の胸骨切開4例)に本装具を装着した。男児:女児=6:7。手術時年齢:新生児1例、1~6ヶ月6例、7~12ヶ月3例、1歳~3歳3例。【結果】装着開始は術後1ヶ月~2年6ヶ月(中央値:7ヶ月)、装着期間は8日~1年8ヶ月(中央値:7ヶ月)で、胸骨変形の改善が1例、悪化防止が12例。【結語】術後装着開始のタイミングおよび患部圧迫に必要かつ適正な圧力設定を症例蓄積から抽出することに加え、変形度の客観的評価方法の導入と長期フォローによる効果判定を通じ本装具の更なる改良を行いたい。