[II-P-160] 当院における乳び胸の検討
キーワード:乳び胸, 術後合併症, リスク因子
【背景と目的】小児心臓手術後の乳び胸発症率は4-9%と報告されている。今回当院で経験した術後乳び胸について検討した。【対象と方法】2010年11月~2014年10月において当院で行われた小児心臓外科手術551例を対象とした。乳び胸の診断は胸水の外観または胸水所見(TP>2g/dl、TG>110mg/dl)で行った。乳び胸発症群と対照群に分け術前因子(年齢、体重、新生児、ダウン症、機能的単心室)、術中因子(姑息術、開心術、側開胸、右心バイパス術、再手術)について比較検討した。【結果】乳び胸は15例(2.7%)認めた。乳び胸発症例の手術時平均月齢13.0ヶ月、平均体重6854g、5例が新生児、3例がダウン症の症例であった。診断はSV 8、TGA 2、cAVSD 1 、TOF 1、TAPVD 1、PDA 1であった。施行手術はTCPC 4、BDG 3、Jatene 2、BTシャント 2、PAB 1、cAVSD根治 1、TAPVD根治 1、PDA結紮 1であった。乳び胸の治療は保存的治療、内科的治療から開始し改善がない場合に外科的介入を行った。実際の内訳は脂肪制限食13例、絶食8例、第13因子補充4例、サンドスタチン6例、胸膜癒着術2例、胸管結紮2例であった。乳び胸治療開始時期は平均13.3POD(1~31POD)、乳び治療期間は平均19.2日(3~60日)であった。13例は軽快したがSVでBDG術後の1例を敗血症で、SV+無脾症候群でPAB後の1例を壊死性腸炎後のMOFで失った。単変量解析では新生児、ダウン症、機能的単心室、右心バイパス術、再手術が有意差(p<0.05)を持ったリスク因子であった。多変量解析では新生児、ダウン症、機能的単心室、右心バイパス術に有意差(p<0.05)を認めた。現在は機能的単心室、右心バイパスの症例は脂肪制限食から開始する予防的治療を始めている。【結語】術後乳び胸発症のリスク因子は新生児、ダウン症、機能的単心室、右心バイパスであった。これらリスク因子を考慮することで早期の診断、治療の開始が可能となると思われた。